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社説

三菱マテリアル 歴史の責任果たす和解

 日中戦争時に日本に強制連行され、過酷な労働を強いられた中国人元労働者3人と三菱マテリアル(旧三菱鉱業)が和解文書に調印した。最終的には3700人以上の元労働者や遺族との和解を目指しており、戦後補償としては過去最大規模になる見通しだ。

     同社は「過ちて改めざる、これを過ちという」「過去のことを忘れずに、将来の戒めとする」と明確に謝罪を表明した。1人当たり約170万円を支払い、記念碑建立など和解事業を進めるという。過去の歴史に向き合う姿勢を高く評価したい。

     日本は戦争に伴う国内の労働者不足を補うため、1942年の閣議決定で中国人労働者を日本に移送する方針を決めた。契約労働の形式を取っていたものの、実態は捕虜を含めた強制連行だった。

     戦後、外務省がまとめた報告書によると、約3万9000人の労働者が連行され、三菱鉱業を含めた35社の事業所で働かされた。うち6800人以上が死亡しており、死亡率は実に17・5%に達する。

     戦争末期、過酷な労働状況に耐えかねた中国人労働者が蜂起し、弾圧された秋田の花岡事件では2000年に東京高裁で被害者と鹿島(旧鹿島組)との和解が成立した。09年には広島県に強制連行された労働者と西松建設との和解も実現した。

     西松建設の和解は07年の最高裁判決がきっかけだ。中国国民の賠償請求権は72年の日中共同声明で「裁判上訴求する権能を失った」と初の判断を示し、請求を退ける一方、強制連行の事実や劣悪な労働環境を認め、同社に「被害の救済に向けた努力」を求めたからだ。

     三菱マテリアルは昨年、旧三菱鉱業の鉱山で米国人捕虜を働かせたことを認め、元捕虜に謝罪するなど歴史の清算に動いてきた。日本政府は賠償問題は決着済みとの立場だが、企業の自主判断による和解は最高裁が求める「被害救済」の精神に沿ったものだ。

     今回の和解では同社が歴史的責任を認めて謝罪し、基金や記念碑の建立のほか、判明していない被害者や遺族の所在調査にも協力する。全員との和解には時間がかかるだろうが、和解を受け入れた被害者は同社の姿勢を評価している。誠意は他の中国の人たちにも伝わるはずだ。

     今回の和解が中国人の強制労働に関わった他の日本企業や、韓国の元徴用工問題に与える影響を懸念する声もある。それぞれ事情は異なるだろうし、戦後補償を政治利用するような動きもあってはならない。しかし、結局は日本自身の問題だ。歴史に向き合いながら解決策を探っていくべきだ。

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