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増税先送りの明暗

先送り経済/中 一体改革「頓挫」、社会保障費カット必至

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 1日昼ごろ、介護保険に関する厚生労働省の審議会の終了間際、全国町村会代表の委員、河村文夫・東京都奥多摩町長が悲痛な声を上げた。

     「保険料滞納など厳しい状況があり、消費増税延期を危惧している。(低所得者対策のために)ぜひ別の財源を見つけてほしい。国家全体で真剣に考え、努力をしていただきたい」

     介護保険を運営する自治体の長として、増税延期が報じられる中、審議会で話題にも上らなかったことへのいらだちがにじんだ。

     その6時間後、安倍晋三首相は首相官邸での記者会見で再延期を表明し、「(10%に引き上げた場合と)同じことをすべて行うことはできない」と明言。優先課題として、保育所や介護施設などの受け入れ枠拡大と保育・介護士の待遇改善を挙げた。いずれも首相肝煎りの看板「1億総活躍」の目玉政策だ。だが、消費税を安定財源として社会保障制度の維持・安定化を図る「税と社会保障の一体改革」に掲げた子育て・介護充実策の一部にすぎない。一体改革は事実上、幕が下ろされた。

     無藤隆・白梅学園大教授は「保育では受け入れ枠の拡大だけでなく、子どもの詰め込みすぎの解消といった保育環境の改善も大事だ。先延ばしにすべきではない」と訴える。無藤教授は子育て施策の方針を議論する内閣府の「子ども・子育て会議」の会長でもある。「仕事と子育てを両立したいと思う親が増えているのに、保育サービスの質がよくならなければ不安で預けられない。回復基調にある出生率に悪影響を与えかねない」と懸念する。

     一体改革は、福田政権が2008年1月に設置した「社会保障国民会議」に議論の源流がある。麻生政権の「安心社会実現会議」を経て民主党政権下の12年6月に当時の民主、自民、公明3党が合意。自民党の政権復帰後に「社会保障制度改革国民会議」が具体策をまとめて安倍首相に渡した。

     税率を5%引き上げる一方で、全国民共通の基礎年金の財源に投入する税金の割合を3分の1から2分の1に拡大。さらに、年金・医療・介護の低所得者対策を強化するとともに、現役世代のメリットにもなるよう子育て支援の財源に消費税を充てることを決めた。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる25年に向け制度のほころびを繕うのが狙いだった。

     社会保障制度改革国民会議のメンバーだった宮本太郎・中央大教授は「一体改革は頓挫した」と言い切る。消費増税分は社会保障の充実策だけでなく、社会保障費を賄うために生じたとされる過去の赤字補填(ほてん)にも充てられる。宮本教授は「増税延期で一部の充実策ができなくなるだけでなく、大規模な支出カットが必要なのは明らかだ」と指摘し、「社会保障がその中心になるだろう」とみる。

     宮本教授の言葉を裏付けるように、政府は今、社会保障費の抑制策を検討している。議論の中心は、今後10年でそれぞれ10兆円程度の費用増が見込まれる医療と介護だ。

     首相は1日の会見で、社会保障充実の財源として民進党の岡田克也代表の提案する赤字国債発行を「無責任だ」と批判し、税収の増加分など「アベノミクスの果実」の活用を主張した。だが、税収増がいつまで続くのか、与党内にも懐疑的な見方は少なくない。

     「財務省は何か隠していないか」。自民党からは、かつて「埋蔵金」と呼ばれた特別会計の剰余金などを当てにする声が早くも出始めている。

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