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フロリダ乱射 銃規制こそ世界の声だ

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 イスラム世界の重要行事「ラマダン(断食月)」の最中、米フロリダ州オーランドのナイトクラブで、イスラム教徒による銃乱射事件が起きた。死者は49人に上り、米国での乱射事件としては史上最悪となった。

 オーランドにはディズニーワールドなど有名なテーマパークがあり、日本人観光客も多い。殺生を戒めるラマダン期間中の無差別殺傷。それも、イスラム教に改宗したプロボクシングの元ヘビー級王者、ムハマド・アリさんの葬儀(9日)の熱気も冷めやらぬ中での凶行である。

 またも米国か、と言わざるを得ない。昨年12月、米カリフォルニア州の乱射事件で十数人が死亡した。その際、オバマ大統領は銃犯罪の恒常化を憂い、涙を流して銃規制の強化を求めたが、議会は耳を貸そうとしなかった。上下両院とも過半数を占める野党・共和党の議員らは、銃の所有と携帯は憲法上の権利として銃規制に反対している。

 今回の事件でも、大統領選候補の座を確実にした2人、民主党のクリントン前国務長官と共和党の実業家、トランプ氏は真っ向から対立する。銃規制の必要性を訴えるクリントン氏に対し、トランプ氏はオバマ政権の治安対策を批判、「イスラム教徒の入国禁止」という持論の正当化に事件を利用する構えだ。

 銃規制は大統領選の争点にもなりそうだが、規制なしに米国社会の安全を保てないことは明白だ。射殺された容疑者はアフガニスタン出身の両親を持ち、過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓っていたという。捜査当局は事件前、容疑者から事情を聴いていたともいう。

 それでも容疑者が高性能の銃を手に入れて犯行に及んだことは、銃を簡単に入手できる米国の現状を改めない限り、今後とも同種の事件を防ぎきれないことを示している。

 カリフォルニアの乱射事件に対し、私たちは銃の規制も重要なテロ対策だと説いた。近年は過激派がネットを通じて世界中に広報活動を行い、共鳴した者が一匹オオカミ的にテロに走る傾向が強いからだ。

 米国では自国育ち(ホームグロウン)のテロリストも目立つ。対テロで国際的連携を求める米国が、国内ではテロの手段となる銃を規制しない。その矛盾に早く気付いてほしいと世界は願っているはずだ。

 イスラム世界にも課題はある。容疑者は同性愛に反発し、同性愛者らが集まるクラブを狙ったという。イスラム教は確かに同性愛に厳しいが、どんな理由があろうと人を殺傷することは許されない。そのことをイスラム教の権威者らが繰り返し訴えないと、信者16億人を擁する大宗教は米欧で誤解される一方だろう。

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