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木密地域、風情残し防災対策

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火災で煙を上げて燃える新宿ゴールデン街=東京都新宿区で4月12日、本社ヘリから宮武祐希撮影 拡大
火災で煙を上げて燃える新宿ゴールデン街=東京都新宿区で4月12日、本社ヘリから宮武祐希撮影

 東京・歌舞伎町の新宿ゴールデン街で4月、火災が起きた。火災や震災で大きな被害が心配される木造住宅密集(木密)地域だ。風情を残しながら防災力を高める方策を探る努力が始まっている。

 ●ゴールデン街火災

 火の手が上がったのは4月12日午後1時半ごろだった。火元は北端にある木造2階建ての建物。少なくとも3棟計約300平方メートルが焼け、近くに住む60代の女性が軽傷を負った。日中で客はいなかったが、夜だったら大惨事の恐れがあった。

 ゴールデン街では、古い木造長屋にバーなど小さな店舗が約300軒、入居している。多くの文化人が愛し、近年は外国人からの人気も集めている。

 建築基準法は防災上、4メートル以上の道幅を確保する必要があると規定している。だが、ゴールデン街の多くの建物は法施行の1950年以前に建てられており、幅3メートル弱の路地が入り組んだままだ。店先の看板などで、実際の道幅はさらに狭い。

 ●消火に4時間

 火災当日、幅約2・5メートルの消防車両は火元の近くまで入れず、消火栓からホースを何本も継ぎ足して放水にあたった。東京消防庁は、木密地域での火災を想定して事前に現地調査を行った上で活動計画を決めていた。それでも消火までに4時間以上を要し、木密地域での消火活動の難しさが浮き彫りになった。東京消防庁は「積極的な防災訓練と、防火管理者資格の取得などによる意識の向上に努めてほしい」と呼び掛ける。

 ゴールデン街のように昭和の風情を残した木密の飲み屋街での火災は、これまでにも全国で発生し、大きな被害を出してきた。

 ●防犯カメラや訓練

 東京・新宿駅西口にある「思い出横丁」では1999年11月、火災で3分の1の店舗が焼失した。同横丁は火災後、組合が補助を出して全店舗に消火器を設置。道路脇にある消火栓などに差し込み、ホースをつないで放水する簡易消火器材「スタンドパイプ」を購入し、不審火を無くそうと防犯カメラも10台以上、設置した。さらに、東京消防庁と合同で年1回実施している防災訓練では、スタンドパイプや自動体外式除細動器(AED)の使い方を確認している。

 同横丁の飲食店が加盟する「新宿西口商店街振興組合」の金子慎太郎広報部長は、「レトロな街並みと防火対策の両立は難しい。だから火を出さない努力をするしかない」と打ち明ける。

 ●再開発で道幅広げ

 2014年の火災で39店舗が焼けた大阪・十三駅前の「しょんべん横丁」は今年2月、道の拡幅を含む再開発に着手した。当初は建築基準法の特例「連担建築物設計制度」を適用して道路を「通路」とみなし、約3メートルの道幅を維持することも検討した。しかし、借地権者ら全員の合意を得られず、1年近い議論の結果、私道の道幅を4メートルに拡幅することで合意した。

 ゴールデン街は現在、地元の新宿区などと、焼損した店や周辺店舗の再建や今後の防災対策について検討を進めている。ゴールデン街の飲食店が加盟する「新宿三光商店街振興組合」の石川雄也理事長は「一日も早く元の形で再開したい」と望む。

 区都市計画課は「火災に強い街でありながらも、地域の財産である街並み、風情をなんとか残せるように考えないといけない。共に議論するのは今しかない」。ゴールデン街の魅力を残しながら、災害に強い街へとどう育てるかが課題だ。【円谷美晶】

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