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池澤夏樹・評 『渡辺京二』=三浦小太郎・著

 (言視舎・4104円)

 我々は渡辺京二という思想家をずっと見落としてきた。

 『逝きし世の面影』によってようやくこの人を発見したのはいいが、読み誤って、江戸時代を偲(しの)ぶ懐旧主義者と見なしてしまった。

 本書は、彼の著書を丁寧に読むことを通じてその思想の形成過程を辿(たど)る優れた評伝である。

 渡辺京二は一九三〇年に「活動弁士の父とハイカラ女性の子供として」京都に生まれた。満州に渡り、敗戦後に帰国、父母の郷里である熊本に住んだ。その後、東京時代もあったけれど、熊本は失われた大連に変わる彼の生涯の基点であり続けた。彼が解こうとした神風連(しんぷうれん)も、宮崎滔天(とうてん)も、また終生の文学的パートナーとなった石牟礼道子も、そしてもちろん水俣病の戦いも、みな熊本に関わる。彼は郷里を持つ思索者であった。

 なぜ郷里が必要だったのか。近代が人々を郷里から引き離し、市民という名のもとに均一化しようとしたのに対して、人を人の立場に戻すのにトポスは欠かせなかったから。

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