メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

Listening

<デ・コレスポンデント>オランダのネットメディア 調査報道に特化、読者と対話重視

フォーラムには新聞やネットメディアの記者、学生らが詰めかけ、終了後もロブ・ワインベルグさん(左)とハラルド・ドニュングさんへの質問が途切れなかった=東京都新宿区で2016年6月16日、青島顕撮影

[PR]

「デ・コレスポンデント」の記事の一つ。最上部に記者の似顔絵と署名があり、その下に記事の要約と見出し。大きな写真の下から長文の記事が始まり、スクロールしながら読む。広告はどこにもない。

 広告を載せず、購読料だけで運営するオランダのインターネット報道メディア「デ・コレスポンデント」が注目されている。速報は他メディアに任せ、調査報道やニュースの深掘りに特化し、読者との対話を重視するスタイルが支持を集めたとみられる。創設者とウェブデザイナーが6月中旬に来日し、新しい報道のかたちを語った。【日下部聡、青島顕】

購読料のみで運営

 「ニュースの多くは一日ももたない。しかも表面的です。それが嫌でした」。創設者で編集長のロブ・ワインベルグさん(33)は、16日に早稲田大(東京都新宿区)で開かれた「報道実務家フォーラム」(早大大学院政治学研究科ジャーナリズムコースなど主催)で、そう語った。

 「従来のジャーナリズムが扱ってきたニュースは、日々の特異な出来事や良くないことばかり。気候変動のように少しずつ変化する事象や、長い時間をかけて良くなってきたことはニュースになりません。その結果、人々は社会はひどいものだと思い、斜に構えたり恐れたりするようになる。そういうニュースの在り方そのものを私たちは変えたかった」

 ワインベルグさんはアムステルダム大学で哲学を学び、オランダの全国紙「NRCハンデルスブラット」の朝刊編集長として、若い高学歴層をターゲットにした紙面で部数を伸ばした。しかし、ストレートニュース中心の紙面作りを求める会社と方針が合わず、2012年に解任された。

 13年にデ・コレスポンデントを設立。この時、ネット上で不特定多数の出資を募る「クラウドファンディング」によって、わずか8日間で約1万5000人から計100万ユーロ(約1億1800万円)を集め、欧米のメディア業界で大きな話題になった。

 デ・コレスポンデントの読者は現在、約4万6000人にまで増えた。購読料は月額6ユーロ(約700円)。年間契約なら60ユーロ(約7000円)。22人の記者、20人の編集者、8人の技術者で運営し、フリージャーナリストとも契約している。記事の更新は毎日5本。購読者からSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて記事のリンクを受け取った人は、購読者でなくても無料で読めるなど、SNSによる拡散も意識した仕組みになっている。ほとんどの記事はオランダ語だが、一部は英訳されている。過激派組織「イスラム国」(IS)と戦う狙撃手のルポ▽記者がハッカーと街を歩き、公共Wi−Fiでやり取りされる情報が簡単にのぞき見できる実態を暴いた記事▽SNSに子供の写真をアップすることの問題点を解説した記事−−など、興味をそそられる内容が多い。

投稿通じ知識共有

 だが、デ・コレスポンデントの最大の特徴は、読者との関係にある。

 「どのように記者の個性を打ち出すか、読者とやり取りしやすいかを考えて全体をデザインした」。ウェブデザイナーのハラルド・ドニンクさん(34)は、そう話す。

 記事には記者の似顔絵が付き、名前をクリックすると写真や略歴、連絡先が現れる。そして、記事ごとに投稿欄がある。デ・コレスポンデントは投稿を「コメント」と呼ばず「コントリビューション」(寄稿)と呼ぶ。オランダでもニュースサイトのコメント欄は「怒り」や「陰謀論」で荒れることが多いという。ワインベルグさんは語る。「だから、私たちは意見でなく情報や具体例を求めています。寄稿を通じて専門家と知識を共有することで、記事はより豊かに建設的になっていく。ジャーナリストは『会話のリーダー』であり、デ・コレスポンデントはジャーナリストと読者をつなぐプラットフォームだと思っています」

 投稿は実名で購読者に限られる。有料サイトの内側に載るため、グーグルなどの検索にかかることもない。こうした仕組みもあり、多少問題のある寄稿者がいても、全体としては冷静さが保たれているという。

 デ・コレスポンデントは今後、外国語での発信を強化していく方針。

コメント

投稿について

読者の皆さんと議論を深める記事です。たくさんの自由で率直なご意見をお待ちしています。

※ 投稿は利用規約に同意したものとみなします。

利用規約

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 質問15項目に菅首相答弁わずか10分 野党反発、与党も「さすがにまずい」

  2. 「短命首相リスト入り?」 菅政権の支持率急落 海外メディアは…

  3. 二階氏「ケチつけるな」に見え隠れする「権力集中の弊害」

  4. 福岡県知事が検査入院 1週間程度、COPDの疑い

  5. 政府への怒り・いら立ちが書き込みの大半に 一部でマスコミ批判も 毎日新聞世論調査

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです