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企業主導保育所

長男死亡の母、安全管理の改善訴え

賢人ちゃんの遺影をなでる母親。入所する直前に歩き始めたばかりで、用意していた靴(手前)は一度も履くことができなかった=千葉県内の自宅で2016年6月22日午前4時半、黒田阿紗子撮影

 東京都中央区の認可外保育所で3月、1歳2カ月の男児が昼寝中に死亡した事故を巡って29日、都の検証委員会に母親(38)が出席して「保育士が若手しかおらず、安全管理に問題があった」と意見陳述した。事故があったのは企業が従業員向けに設けた「事業所内保育施設」。国はこうした施設を2年間で5万人分整備する方針だが、保育士不足の中で施設が増えても、人員配置など安全面の対策が追いつけないリスクがある。【黒田阿紗子】

     保育施設の重大事故は今年度から、再発防止のため第三者による事後検証が自治体の努力義務となった。都は5月に検証委を設置し、この日、非公開で両親から意見を聞いた。

     長男賢人ちゃんを預け始めたのは2月中旬。1年半の育児休業の期限が5月に迫る中、待機児童が多い近所の認可保育所に入るのは絶望的で、1枠だけ空いていた会社が契約する職場近くの事業所内保育施設を利用しようと決めた。

     事故はそれから1カ月たたないうちに起きた。都などによると、賢人ちゃんは施設に慣れていないことを理由に、他の子どもとは別の部屋で1人で寝かされた。職員はうつぶせにして背中をさすり、寝入ったのを確認するとそばを離れたという。2時間以上たって見に行くと、うつぶせのまま息をしていなかったという。

     内閣府の集計では、保育施設の死亡事故は昨年14件で、うち10件は事業所内保育施設を含む認可外施設で起こった。睡眠中の事故が10件と最も多く、うつぶせ寝だったのがうち6件。母親によると、施設では窒息の心配がないかを呼吸や顔色で確認しておらず、担当者から「勉強不足で現場の認識が甘かった」と説明を受けたという。

     事故のあった「キッズスクウェア日本橋室町」は、厚生労働省内の事業所内保育施設も運営しているアルファコーポレーション(京都市)が2011年に開業。当時は0〜4歳の20人を施設長を含む保育士4人と無資格の非常勤職員2人がみていた。保育士の数は基準より手厚かったが、施設長は現場経験1年3カ月で着任し、他も1〜4年目の若手だったという。

     同業者からは「実績ある会社なので、初歩的な安全管理が行われていないことに驚いた」「短期間に定員を拡大すれば、ベテランを配置できない施設が増えるのは当たり前だ」といった声が上がる。

     母親は企業が保育施設を作ることに否定的なわけではない。意見陳述を終えた後、こう語った。「預け先が足りないなら、育休の上限を延ばしてほしい。無理して0歳時から預けざるを得ない矛盾こそ解消すべきです」

    安全管理、業者任せ

     企業が主体となった保育施設の整備は、政府が待機児童対策の目玉として後押ししている。今年度からは「企業主導型保育事業」という新たな枠組みを作り、企業への補助を手厚くした。だが、基本的に地元の市区町村が関与しないため、行政によるチェックは手薄なのが実情だ。

     認可保育所の場合、開設の際は市区町村と都道府県から実質的な「二重審査」を受ける。これに対し企業主導型は、児童育成協会に書類を提出して承認されれば都道府県に届け出るだけで済み、保育士の有資格者も職員の半分でいい。

     指導監督も、認可には都道府県と市区町村の両方に立ち入り検査の権限があるが、企業主導型は都道府県のみ。都内の認可外施設は約1000カ所もあり、年150カ所前後が限界だ。都の担当者は「企業が安全管理をしていることが前提なので優先順位は低い」と話す。

     だが、企業にも当事者意識は薄く、事故があった施設と契約する会社の広報担当は「事業者とやり取りするのは福利厚生を担当する人事部局。保育のプロでないため監視は難しい」。安全管理は事業者任せになっている。「保育園を考える親の会」の普光院(ふこういん)亜紀代表は「新事業は保育の質を担保する仕組みがあまりにもろく、このままでは事故を繰り返しかねない」と指摘する。

    ◇事業所内保育施設と企業主導型保育事業◇

     事業所内保育施設は昨年3月現在、全国に4593カ所あり、7万3792人の子どもが利用する。今年度の新設分からは企業主導型保育事業として、認可保育所と同水準の施設整備費や運営費の公的補助が受けられる。17年度末までの予算規模は835億円で、早ければ今秋にも新事業による施設が運営を始める。企業の設置だけでなく、保育事業者が開設後に企業と契約する場合も補助対象となる。

    認可保育所と企業主導型保育施設の比較
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