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次々と世に出るエンターテインメント小説。例えばミステリー一つとってもさまざまなタイプの快作、意欲作があふれている。一緒にその大海を航海しましょう。

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時代相に魅力 一気の惨劇

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 伊東潤『横浜1963』(文芸春秋)は、『国を蹴った男』『巨鯨の海』など歴史小説で知られる伊東が初めて手がけた現代もので、しかもミステリー。タイトル通り1963年、オリンピック前夜の横浜を舞台に連続殺人事件を描いた。

 横浜港で女性の死体が見つかった。外国人絡みの可能性が浮上し、神奈川県警外事課のハーフの警察官ソニー沢田に捜査のお鉢が回ってくる。やがて米兵の関与が疑われるが、日米地位協定もあって壁に突き当たる。わずかな望みをかけて報告書を米海軍犯罪捜査局に持っていくと、外国人にしか見えないソニーの前に、日本人にしか見えない日系3世の兵曹長ショーン坂口が現れる。二人の出会いが少しずつ事態を動かしていく。

 何よりも引きつけられるのは当時の時代相だ。オリンピックを控えているといってもいまだ敗戦の濃い影が残る。傷痍(しょうい)軍人、進駐軍時代の影響、日本人の心性の変化、人種差別感覚など今につながる始まりの時代をこれでもかとみせつける。

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