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若島正・評 『ヨミスギ氏の奇怪な冒険』=石上三登志・著

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 (盛林堂ミステリアス文庫・1200円)

自己形成期の小説へのオマージュ

 本書は、一九七〇年代に海外小説好きの読者たちの心を奪った、伝説的な月刊誌<奇想天外>第二期の、一九七八年から七九年にかけて連載された記事をまとめたものである。ここで最初に告白しておくと、評者はこの<奇想天外>の、熱烈な、という言葉を使ってもいいほどの、愛読者だった。だから、この雑誌に集まっていた魅力的な書き手たちには、海外の作家のみならず、日本の評論家にも少なからぬ影響を受けた。しかし、どういうわけか、この石上三登志(いしがみみつとし)の連載『ヨミスギ氏の奇怪な冒険』は、当時ちゃんと読んだ記憶がないのである。今回、こうして一冊の文庫にまとまった機会に読んでみて、こんなに素晴らしい連載だったのかと驚いた。

 今にして思えば、あの頃のわたしは、石上三登志の文章を敬遠していたふしがある。やはり<奇想天外>誌にその一部が連載され、後に代表作となる『手塚治虫の奇妙な世界』や、『男たちのための寓話(ぐうわ)−−私説ヒーロー論』を読み、その情報量に圧倒されるとともに、まるで独楽(こま)がブンブンうなりをたててまわっているような、口出しのできない迫力に気圧(けお)されたせいだったのだろう。

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