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本郷 和人・評『江戸へおかえりなさいませ』杉浦日向子・著

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「おとなごころ」が鮮やかによみがえる

◆『江戸へおかえりなさいませ』杉浦日向子・著(河出書房新社/税抜き1600円)

 今更であるが、鎌倉時代から戦国時代くらいまでを中世といい、江戸時代を近世という。私は中世史研究者であったので、江戸について分かりやすく、積極的に発言していた杉浦日向子さんのことをほとんど知らなかった。辛うじて認識していたのは、杉浦さんがマンガ家であること、若くしてすでに亡くなっていることくらいであった。だから、エッセーというのは意外な感じがした。

 読後感を一言で表すと、「なんだかいいね」。河出書房にはよほどの杉浦ファンの編集者がいたのだろう、さまざまな雑誌から単発のエッセーが丹念に集められ、丁寧に配置されている。また、著者のプロフィールには前向きな情報だけ載っていて、いつ亡くなったかすら記されていない。余計な詮索ぬきに、江戸に「おとなごころ」を見るエッセーを純粋にエッセーとして楽しんでほしいという心意気であろう。何とも粋な仕事である。

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