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余録

「上を向いて歩こう」の録音の際…

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 「上を向いて歩こう」の録音の際、坂本(さかもと)九(きゅう)が「ウヘホムフイテ、アールコホゥホゥホゥ」と歌い出すと永六輔(えいろくすけ)さんは一瞬自分の作った詞を歌っているのか、耳を疑った。「おまえ、どこにホゥホゥホゥと書いてあるんだ」と叱ったという▲「これじゃヒットしない」という永さんの意見と逆に曲は世界的にヒットした。後に永さんは九が小さい時から清元や小唄を仕込まれていたことを知り、納得した。「あの歌い方は邦楽だった。彼の中に日本の伝統が生きていた。世界的ヒットはそれと関係がある」▲その歌が50年を経て東日本大震災の復興ソングとされたことも永さん自身は「あまりふさわしくない」と考えたそうだ。若き永さんが世に手渡した歌は人々の心に化学変化を起こしながら国境を、時を超えて歌い継がれる▲作詞家、タレント、随筆家……肩書を並べれば何行も必要な永さんのライフワークとなったのが、ラジオのパーソナリティーだった。その反骨精神にはテレビはいかにも居心地が悪かったらしい。その後、長寿番組の記録も作られたラジオの永さんのフリートークだ▲明治生まれの老人の言葉を引いて「最後」を「おしまい」といいかえてごらん、言葉が優しくなるから−−と書いていたのは昨年9月の小紙の連載コラムだった。ろれつが回らなくなった闘病中にも、心地よい言葉遣いの大切さをラジオへの遺言のように訴え続けた▲「話芸は伝統芸、話術は一代限りのキャラクター」と語り、いずれでもない「おしゃべり老人」と自らを笑っていた永さんである。芸も術も超えて人々の心に長くすみ続ける「声」がこの世に残された。

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