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社説

参院選後の首相 おごらず、包み隠さず

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 与党の獲得議席が改選過半数を超えた参院選を受け、安倍晋三首相がきのう記者会見した。「勝利の余韻にひたっているいとまはない」と気を引き締めたが、その表情からは自信と余裕がうかがえた。

 衆院に続いて参院でも憲法改正に前向きな勢力が発議に必要な3分の2の議席を確保した。かつてない強固な政権基盤である。自民党が比例代表で前回から165万票以上伸ばし、15年ぶりに2000万票台に乗せたことも首相に力を与えた。

 首相は経済・外交政策を「一層力強く前に進めなければならない。それが国民の負託にこたえる道だ」と高揚感すら漂わせた。

 与党が躍進したのは事実だ。しかし、つぶさに見ていけば喜んでばかりもいられないのではないか。

 自民党は32ある1人区で21勝11敗と勝ち越したものの、31選挙区だった前回の29勝2敗には遠く及ばなかった。野党が候補を統一した戦術が一定の成果を見せたこともある。

 現職2閣僚が落選したのは参院選では初めてだ。東日本大震災で原発事故があった福島と米軍基地問題を抱える沖縄である。安倍政権にとって痛手となろう。

 農業地帯の東北6県では秋田を除いて自民党が敗北した。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に対する農業県の不信の根強さを示したともいえる。

 首相の記者会見では、語るべきことを語らなかった印象も残る。

 首相は冒頭発言のほとんどを経済対策に割いた。「未来への投資」を掲げ、インフラ整備、子育て、無年金、奨学金など幅広い層に訴える政策項目を並べた。

 しかし、消費税増税の再延期によって財源が不足する弱者対策にどう優先順位をつけるのかなど、政権にとって負担となる説明は避けた。

 意欲を示す憲法改正について自ら触れることはなかった。質疑応答でも「憲法審査会で議論が収れんすることが期待される」と繰り返すだけで、多くを語ろうとしなかった。

 憲法改正の実現は「自民党総裁としての責任」と首相は言う。もちろん、国民合意の形成には熟議が必要で、拙速は避けるべきだ。しかし、どう実現したいかを国民に最低限、説明する責任はないのか。

 改憲には世論の後押しが必要だ。経済対策の実行で世論の支持を高め、それを追い風に改憲に本格着手したいというシナリオを描いているようにみえる。

 自信がおごりに変われば国民の信も遠のく。プラスの効果もマイナスの影響も率直に語るべきだ。圧倒的な数だからこそ、謙虚な政権運営を望みたい。

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