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<記者の目>ウルトラマン50年=北林靖彦(東京学芸部)

シリーズ最新作の「ウルトラマンオーブ」から。左は水ノ魔王獣マガジャッパ=(C)円谷プロ(C)ウルトラマンオーブ製作委員会・テレビ東京

時代を映すヒーロー

 円谷プロダクションとTBSが制作した特撮番組「ウルトラマン」が今月、放送開始50周年を迎えた。9日から最新作「ウルトラマンオーブ」がテレビ東京系で始まったほか、初期の作品も多くの局で再放送されている。半世紀にわたって支持される実写ドラマシリーズは例がない。

    作り手戦争経験、公害や反戦扱う

     1966年7月、「(初代)ウルトラマン」が始まった時、私は4歳だった。“悪い怪獣”が「スペシウム光線」でこっぱみじんにされるシーンにわくわくした半面、大阪万博(70年)の見せ物用に孤島で捕獲された古代怪獣ゴモラが、空輸中に暴れて逃亡。大阪城を破壊したため退治される場面は、幼心に理不尽さを覚えた記憶がある。単純なヒーローものではなかった。

     当時は「いざなぎ景気」の真っただ中。大阪万博を前に「未来はバラ色」の風潮の陰で、水俣病や四日市ぜんそくなどの公害が社会問題化し、海外に目を向ければ、米ソ冷戦下でベトナム戦争が泥沼化の様相を見せていた。そんな世相を反映し、公害や反戦をテーマにしたものや、武力を直接行使せず、人間の心を操って地球征服を狙う宇宙人も登場。勧善懲悪に収まらない話も少なくなかった。

     背景には、スタッフや出演者の多くが戦争を経験し、「正義」と「悪」に絶対的なものはないと肌で感じていたことがあったのではないか。中でもメインライターを務めた沖縄出身の脚本家、金城哲夫は30話「まぼろしの雪山」で、村で迫害を受けている少女を助ける存在として怪獣ウーを描き、本土からの差別や沖縄戦、米国統治といった自らの体験を投影させた。

     さらに、67年にスタートした「ウルトラセブン」の42話「ノンマルトの使者」では、「(海底人の)ノンマルトが地球の先住民族で、人間が地球の侵略者だったとしたら」というせりふを盛り込み、さまざまな支配者に翻弄(ほんろう)された沖縄の思いをつづったとされる。

     「初代」「セブン」の平均視聴率はそれぞれ36・8%と26・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。継続を望む声も多かったが、制作費の超過などがたたり、「セブン」終了後、第2シリーズ「帰ってきたウルトラマン」(71年)が始まるまでの2年半、休止を余儀なくされた。キャラクタービジネスで成功した「仮面ライダー」に倣い、「ウルトラマンA(エース)」(72年)以降は、わかりやすいストーリーと“玩具として売りやすいキャラクター”にかじを切った。それは54年、核実験の落とし子として誕生し、最初は畏敬(いけい)の対象として描かれた映画「ゴジラ」が、次第に娯楽性が重視され、「子供のアイドル」になっていくさまと重なる。

     アニメ版も制作されたが、「初代」や「セブン」ほどの人気は取り戻せず、第3シリーズ「ウルトラマン80」(80年)までに5年、次の平成第1シリーズ「ウルトラマンティガ」(96年)までに15年半の空白期間を要した。円谷プロも迷走した。設立時は東宝だった経営母体は何度も変わり、現在はパチンコ機の開発販売会社の子会社になっている。

    「心優しき巨人」100年で原点回帰

     作品の浮き沈みについて、円谷英明・元円谷プロ社長は著書「ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗」(講談社現代新書)で「ウルトラマンという基本名称は変わらないのに、キャラクターや舞台設定など、番組コンセプトのめまぐるしい変転が、視聴者をとまどわせた」と分析している。

     2001年、39歳になった私は21世紀最初のシリーズ「ウルトラマンコスモス」を取材した。ウルトラマンは、興奮抑制光線で怪獣をおとなしくさせ、怪獣保護管理センターに収容する優しいヒーローになっていた。初代ウルトラマンから関わった佐川和夫特殊技術監督は「初代には心優しき巨人というコンセプトがあったが、次第に派手で攻撃的になった。円谷英二(円谷プロ創設者)生誕100年の今年(01年)は、原点に戻るべきだと考えた」と話した。

     それから14年後の昨年、「ウルトラマンX」の田口清隆監督は「戦う者同士、お互いに正義がある。怪獣や宇宙人が暴れるのも理由がある。共存させることも必要」と“優しさ路線”の踏襲を強調した。そこには親や社会も納得するテーマを求められる今時のヒーローの苦悩も感じた。

     この50年、ウルトラマンは“大人の事情”で幾度となく姿を消しては復活し、種類も40を超えたが、心と体の痛みを乗り越えて戦うヒーローの基本線は変わらず、人は励まされてきた。それは「子供が見る番組だからこそ、手を抜いてはいけない」と、制作者が時代の変化に合わせながら期待に応えてきたからではないだろうか。

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