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<えらぼーと>2016年参院選ボートマッチ、検証座談会 利用者大幅増、95万4467人

【左】慶応大大学院教授の曽根泰教さん【中央】埼玉大社会調査研究センター長の松本正生さん【右】慶応大教授の片山善博さん
【左】慶応大大学院教授の曽根泰教さん【中央】埼玉大社会調査研究センター長の松本正生さん【右】慶応大教授の片山善博さん

 スマートフォンやパソコンで政党や候補者との意見の一致度が測れる「毎日新聞ボートマッチ・えらぼーと」。「18歳選挙権」で初めて行われた第24回参院選では、公示日(6月22日)から投開票日(7月10日)まで19日間の利用者数が延べ95万4467人に達した。過去7回のえらぼーとで最多だった2012年衆院選の約45万人から倍増した背景を監修委員の曽根泰教慶応大大学院教授、松本正生埼玉大社会調査研究センター長、片山善博慶応大教授に分析してもらった。【司会・平田崇浩、写真・竹内幹】

現状維持しか選択なく 松本氏

争点示せぬ民進に責任 片山氏

野党共闘の説明も不足 曽根氏

政策考えるツール必要 曽根氏

スマホ世代が有効活用 松本氏

古い政治変える可能性 片山氏

 −−参院選で示された有権者の意識をどう考えますか。

 曽根 わかりにくい選挙だった。「改憲勢力3分の2」を有権者が取らせようと思って取らせたわけではない。結果的には日本の政治は安定していると見ればいいし、当面、安倍政権は続く。逆に3分の2を取ったことで、改憲できるのにやらないのかと安倍さんには大変なプレッシャーになるでしょう。

 片山 私も評価が難しいと思う。一人一人が3分の2とかアベノミクスとか消費増税とかを考えて投票したわけではない。総括すれば、国民の多くは安倍政権でいいという評価を与えた。野党は4党が連携し、東北は軒並み1人区で善戦したが、その結びつきは遅く、理念がはっきりしなかった。民主党が名前を変えたのも得票面ではマイナスだったと思います。

 松本 一言で言えば現状維持の選挙でした。将来に対する不安が強い中で、民進党は年金・介護などの問題で責任を持つというメッセージを出すことができなかった。野党共闘というのは自分たちを守る手段であり、これも現状維持です。

 −−政党は有権者に争点を示せなかったと?

 片山 どちらかというと野党に責任がある。消費税にしても、憲法にしても民進党は明確な論点を提示できなかった。「3分の2を阻止する」と言われても、有権者は自分の1票との関係がピンとこない。今後、衆院解散・総選挙があるかもしれない。野党第1党の民進党の中できちんと論議して、与党に対峙(たいじ)する政策を打ち立てる作業が必要になると思います。

 曽根 税と社会保障の一体改革に関する自民、公明、旧民主の3党合意はどこへ行ったのか。安倍晋三首相が前の総選挙で約束した消費税の引き上げをまた延期するロジックを民進党はなぜ突き崩せないのか。アベノミクスを批判するなら、それに代わる経済政策を打ち立てるべきです。政策なしに野党共闘というのは国民への説明が明確ではなかったと思います。

 −−争点が見えず、投票率が下がるのではないかと言われましたが、前回参院選の52・61%から54・70%に上がりました。

 松本 18・19歳の投票率45・45%という総務省の推計速報値は予想したより高い。全体の投票率よりは低いが、18歳選挙権がそれなりに社会全体に刺激を与えたのでしょう。今回は18・19歳の人たちに自分たちが歴史的な世代だという当事者意識が広がっていたと思うのですが、その反動が次の選挙で出るのが逆に怖いと思っています。

 曽根 18歳の推計投票率が51・17%、19歳が39・66%と違っているのも面白い。大学生になると多くは住民票が親元にあって、不在者投票の方法もあまり理解していない。高校生の方が投票の仕方など主権者教育を受ける機会が多かったのでしょう。今後もずっと、18歳になる前からしっかり教えるべきだと改めて気づきました。

 片山 18歳になったからではなく、もっと早いうちから政治教育、主権者教育をしておかなければいけない。それが今回の教訓です。えらぼーとの利用者が増えたのはある意味で当然でしょう。スマホやパソコンを駆使できるIT世代の有権者がどんどん増えていますから。高校生とか若い人は、政策の中身については学校の授業でもあまり教えられていませんから、えらぼーとの輪はこれからますます広がると思います。

 −−えらぼーと利用者95万人のうち半数以上が投票日までの最後の3日間に集中していて、今回の参院選に対する関心は決して低くないと思いました。

 曽根 今回のように争点が明確でない選挙では(自分の考えと政党・候補者の政策を照らし合わせる)多次元のマッチングが必要。それを有権者一人一人が頭の中でこなすのは無理で、えらぼーとのような補助ツールが必要です。回答に迷った質問では別の回答も試すことで、何度でも投票シミュレーションができるのも魅力です。

 片山 報道に登場する高校生や大学生は、わからないから投票に行かないと答えている人も多かったのですが、わからないからわかろうという人も多いと思う。そういう人が頼りにするものの一つがえらぼーとであり、自分の家でもアクセスできる手軽で身近な媒体として人気を博したのだと思います。

 松本 スマホが若い世代の標準装備になって、歩きながらでも、電車でも、投票所に行く途中でもえらぼーとが利用できるようになったのは大きい。

 −−若い世代の政治参加意識がえらぼーとの利用者増につながったと言えそうですね。

 片山 地方選挙でも「ローカルえらぼーと」をやれば、もっと地方選挙が活性化すると思う。市町村議選なんてマスコミで話題にならないから、若い有権者にはわけがわからない。IT世代が参加するようになれば、ローカルの古い政治を変える可能性があります。

 松本 18歳選挙権の初回がたまたま参院選だったわけですが、しばらく国政選挙はないでしょう。今後新たに加わる有権者にとっては身近な地方選挙がその入り口になるわけですから、そこは大きいですね。

利用者と当選者の回答比較 改憲、安保、年金で意識差

 えらぼーとは、毎日新聞が全候補者を対象に実施した政策アンケートと同じ24の質問に答えると、どの政党・候補者の意見とどのくらい一致しているかがパーセンテージで表示される。利用者の回答を集計した結果と参院選当選者の回答を比較すると、憲法改正や安全保障関連法、消費税引き上げ延期、年金などで食い違いが目立つ。

 えらぼーと利用者は当選者より改憲慎重派の割合が高いが、憲法9条については「自衛隊の役割や限界を明記すべきだ」との改正論が多数派。安保関連法については「今の法制でよい」の割合が当選者より少ない。

 消費税に関しては「引き上げを延期または中止すべきだ」が過半数だが、「現行法に従い、引き上げるべきだ」が当選者より多い。将来の年金については「給付水準が下がるのはやむを得ない」が「国民の負担を増やしてでも給付水準を維持すべきだ」を上回り、年金などの社会保障財源の先行きに悲観的な傾向がうかがわれる。

 えらぼーとでは政策質問とは別に「利用者アンケート」も用意し、4518人が応じてくれた。「自分の考えが整理できた」「選挙への関心が高まった」などの肯定的な評価が8割を占めた。感想を自由に書いてもらったところ「今の日本の政治についてちょっとは理解できた。政治ってこんなに難しいんだと思った」(18歳未満)、「親の支持政党と自分の考えが合っていると思わず、自分で考えて投票しようと思った」(18・19歳)、「選挙に興味を持つきっかけにはいい」(20代)などの声が寄せられた。【今村茜】


えらぼーと 質問と回答

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                                      利用者 当選者 候補者

 ◆憲法改正に賛成ですか、反対ですか。

賛成                                     43  62  55

反対                                     46  28  38

 ◆憲法9条の改正について、あなたの考えに近いのはどれですか。

改正して、自衛隊の役割や限界を明記すべきだ                  44  22  15

改正して、自衛隊を他国同様の「国防軍」にすべきだ               14  10  23

改正には反対だ                                37  43  45

 ◆有事や大規模災害時を想定した「緊急事態条項」の創設から憲法改正を始めるべきだ、という意見があります。あなたはこれに賛成ですか、反対ですか。

賛成                                     49  24  20

反対                                     35  51  68

 ◆高市早苗総務相は、政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に対し、電波停止を命じる可能性に言及しました。こうした政府の姿勢をあなたはどう思いますか。

問題だ                                    65  45  59

問題とは思わない                               27  41  33

 ◆来年4月の消費税率10%への引き上げについて、どう考えますか。

現行法に従い、引き上げるべきだ                        33   5   3

法改正し、引き上げを延期または中止すべきだ                  58  88  92

 ◆安倍政権の経済政策「アベノミクス」の恩恵は、地方や中小企業にも及んでいると思いますか。

及んでいる                                  12  30  18

及んでいない                                 78  60  76

 ◆財政健全化に向けた取り組みとして、あなたの考えに近いのはどれですか。

歳出削減で対応すべきだ                            54  21  20

増税で対応すべきだ                               8   6   3

経済成長による税収増で対応すべきだ                      31  51  57

 ◆環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に賛成ですか、反対ですか。

賛成                                     44  57  49

反対                                     35  30  42

 ◆将来の年金について、あなたの考えに近いのはどちらですか。

国民の負担を増やしてでも給付水準を維持すべきだ                30  40  27

給付水準が下がるのはやむを得ない                       53  22  34

 ◆同一労働同一賃金について、あなたの考えに近いのはどちらですか。

同じ仕事なら正社員、非正規社員で賃金の差をなくすべきだ            36  55  60

同じ仕事でも正社員、非正規社員の経験や責任の重さを考慮した差を認めるべきだ  60  26  31

 ◆「子供の貧困」など格差問題について、あなたの考えに近いのはどちらですか。

解消に向かっている                               7  14   9

格差は広がっている                              78  69  81

 ◆原発は日本に必要だと思いますか。

必要だ                                    15  23  24

当面は必要だが、将来的には廃止すべきだ                    53  47  32

必要ない                                   30  20  36

 ◆待機児童解消に向け、政府は自治体への財政支援を増やすべきだと思いますか。

増やすべきだ                                 80  92  84

増やすべきでない                               12   2  11

 ◆地方自治体の活性化を目指す「地方創生」は、成果が表れていると思いますか。

表れている                                  14  40  21

表れていない                                 69  53  73

 ◆安全保障関連法について、あなたの考えに近いのはどれですか。

今の法制でよい                                31  48  24

改正して、自衛隊を海外により派遣しやすくすべきだ               20   5  19

改正して、自衛隊の海外派遣をより制限すべきだ                 23   6  11

廃止すべきだ                                 14  35  42

 ◆政府は、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場を同県名護市辺野古に移設する計画です。移設先としてあなたの考えに近いのはどれですか。

沖縄県名護市辺野古                              28  55  47

沖縄県内の別の場所                               7   3   4

沖縄県以外の国内                               16   6   4

国外                                     31  20  33

 ◆日本の核武装について、あなたの考えに近いものを一つ選んでください。

将来にわたって検討すべきでない                        69  86  73

国際情勢によっては検討すべきだ                        21   9   8

検討を始めるべきだ                               5   −   7

核兵器を保有すべきだ                              3   −   9

 ◆日韓は昨年12月、慰安婦問題を最終的に解決することで合意しました。あなたはこの合意を評価しますか。

評価する                                   66  84  63

評価しない                                  20  11  31

 ◆米国とロシアの関係が悪化しています。日本の対ロシア外交で、あなたの考えに近いのはどちらですか。

米国との協調を重視すべきだ                          24  29  17

北方領土問題の交渉など独自外交を進めるべきだ                 64  44  67

 ◆日本の対中国外交について、あなたの考えに近いのはどれですか。

より強い態度で臨むべきだ                           44   6  23

対話を重視すべきだ                              44  59  57

現状の外交方針でよい                              8  27  16

 ◆米大統領選は共和党のトランプ氏と民主党のクリントン氏の争いになる見通しです。あなたはどちらを支持しますか。

トランプ氏                                   5   −  15

クリントン氏                                 63  26  21

どちらとも言えない                              29  70  62

 ◆国会議員の定数について、あなたはどう考えますか。

増やすべきだ                                  3   2  10

現行のままでよい                               22  28  28

削減すべきだ                                 69  52  54

 ◆参院選の選挙制度について、あなたの考えに近いのはどちらですか。

各都道府県から最低1人は選ばれる制度にすべきだ                41  50  53

「1票の格差」是正のために、隣県同士の「合区」を進めるべきだ         44  29  21

 ◆選挙権年齢が18歳以上に引き下げられました。被選挙権(参院30歳以上、衆院25歳以上)の年齢も引き下げるべきだと思いますか。

引き下げるべきだ                               36  54  57

引き下げる必要はない                             56  34  36

 (注)数字は%、小数点以下を四捨五入。−は回答なし、非該当・無回答は省略。利用者は6月22日〜7月10日に「えらぼーと」を使った95万4467人の集計。当選者の数字は、当選した121人のうちアンケートに回答した111人の集計。候補者の数字は、立候補した389人のうちアンケートに回答した365人の集計。


利用者アンケート 質問と回答

 ◆「えらぼーと」の結果は、あなたの予想通りでしたか、意外な結果でしたか。

予想通りだった   51

意外だった     23

どちらとも言えない 24

 ◆あなたは「えらぼーと」の結果に納得できましたか。

大いに納得できた  16

ある程度納得できた 70

あまり納得できない 10

全く納得できない   3

 ◆以下の質問に「はい」「いいえ」でお答えください。

自分の考えと近い候補者がよく分かった

はい 83 いいえ 16

自分の考えが整理できた

はい 81 いいえ 17

選挙の争点についてさらに知りたいと思った

はい 81 いいえ 17

選挙への関心が高まった

はい 81 いいえ 17

 ◆あなたは前回の衆院選(2014年12月)で投票しましたか。

はい 83 いいえ 15

 ◆あなたは今回の参院選で投票するつもりですか。

必ず行く    80

たぶん行く   14

たぶん行かない  2

行かない     3

 (注)数字は%、小数点以下は四捨五入。6月22日〜7月10日に「えらぼーと」を使った人のうち、利用者アンケートに答えた4518人の集計。

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