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<改正個人情報保護法>要配慮情報を導入 活用の枠組み例示

個人情報保護委員会が改正法の内容をPRするために発行したハンドブック 拡大
個人情報保護委員会が改正法の内容をPRするために発行したハンドブック

 生きている人の情報管理のルールを定めた個人情報保護法が昨年改正され、監督機関の個人情報保護委員会(委員長=堀部政男・一橋大名誉教授)は来春の施行を前に、改正法の運用に関する施行令・規則案の概要を明らかにした。改正法はプライバシー保護と産業振興の両立を掲げており、施行令・規則案は病歴、犯罪歴などを「要配慮個人情報」として慎重に取り扱うとする一方、大勢の情報を個人が識別できないように加工しビッグデータとして活用する枠組みを示す。【青島顕】

 政府は改正法の来春施行に向け準備を進めている。施行後は独立性の強い個人情報保護委員会が監視・監督機関になる。有識者ら9人の委員からなる保護委員会は今月15日まで12回の会合を開き、施行令・規則案などを検討してきた。月内に13回目を開いた後、8月上旬にもとりまとめ、国民の意見(パブリックコメント)を募って今秋の閣議決定を目指す。

個人識別符号を規定

 2005年に施行された個人情報保護法は「個人情報」を管理するルールを定めた。個人情報を「生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるもの」と定義し氏名、住所、生年月日などが該当するとしてきたが、コンピューター技術の発達で何を個人情報とすべきなのかがはっきりしなくなってきた。

 そこで改正法は個人情報の対象として「個人識別符号」を規定した。施行令・規則案は旅券・運転免許証・年金・保険証番号やマイナンバーを個人識別符号とした。指紋・顔認証データ、DNAの塩基配列も含める。保護委員会事務局は「(顔認証など)身体の特徴については、技術の進歩に応じて頻繁に見直しをする可能性があることから、規則で基準を定める」との方針を示す。

 一方で、携帯電話番号などは法人で契約される場合もあるとして個人識別符号から外れる。国家資格の登録番号も含まれない見通しだ。

第三者に提供せず

 要配慮個人情報は改正法で新たに導入される。人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪歴、犯罪被害歴などは「差別・偏見を受けないよう配慮すべき情報」として、原則的に本人の同意がなければ第三者に提供できないとする。改正法案の国会審議では内閣官房の担当者が「法律上、性質が限定される」と強調していた。

 施行令・規則案は(1)心身の障害(2)健康診断の結果(3)医師らによって診察・投薬を受けたこと(4)容疑者・被告として逮捕・捜索・起訴・刑事手続きをされたこと(5)非行少年の疑いをかけられ保護手続きがされたこと−−を対象とする。

 保護委員会事務局は取材に「(3)の投薬は医師から処方されれば風邪薬なども含む。(4)は捜査当局から任意の事情聴取を受けたことも含む」と説明した。

どうするビッグデータ

 ポイントカードやICカードが普及するにつれ、個人の買い物や鉄道乗降の記録を大量に集めて分析すれば、いつ、どんなものが、どんな時間に売れるのかが分かるようになってきた。そうした情報を個人が特定されない形に変えたうえで、利用しようという考え方が生まれてきた。それが「ビッグデータ」の活用だ。

 ところが13年、JR東日本がIC乗車券「Suica」の記録について氏名などを消した上で、生年月、性別、乗降駅、利用日時、利用額の情報をデータ分析用に日立製作所に販売した。法令に違反したわけではなかったが、「自分の情報が勝手に売られた」と問題になった。

 そのためビッグデータ活用のルールづくりが求められた。改正法は、個人情報を削って復元できなくした情報を「匿名加工情報」として届け出ることで、企業などが利用できるようにした。しかし、さまざまなニーズがあるビッグデータに対応したルールづくりは難しい。施行令・規則案は一般的な加工方法などを示すにとどめる。保護委員会は、ひな型は示すものの、業界団体の自主ルールに委ねる方針だ。

新たな「過剰反応」懸念

 現行の個人情報保護法が全面施行された05年以降、「個人情報」の名称が独り歩きして、必要以上に情報が制限される「過剰反応」が顕在化した。法改正で新しい個人情報管理の枠組みが導入される際、新たな過剰反応が起きないかという懸念が専門家から出ている。

 現行法導入後、学校の緊急連絡網や自治会の名簿が作られなくなったり、人名事典や紳士録も掲載に当たって対象者の許諾が必要なことから発行が難しくなってきたりしている。プライバシーを理由にした役所や企業の不祥事隠しも起きた。

 昨年9月の茨城県常総市の水害では、行政は連絡の取れない住民が15人いるとしながら氏名を公表しなかった。15人は結果的に無事だったが、県、市、自衛隊などで情報共有が遅れ、無事が判明した後も捜索が続く事態を招いた。

 改正法で新たに加わる「要配慮個人情報」については、提供に本人の同意が必要という規定を盾に、政治家らが病気を隠す口実などに使われないかとの指摘がある。今後、同様の規定が全国の自治体の個人情報保護条例に盛り込まれた場合、警察や消防が発表内容を制限する理由とする恐れもある。

 今回の施行令・規則案の概要では、要配慮個人情報の範囲を広く解釈できる余地が出てきた。個人情報保護に詳しい岡村久道弁護士は「要配慮個人情報の範囲が国会での議論よりも広がった印象があり、過剰反応を招く恐れがある。報道機関は法の適用除外とされてはいるが、取材先が情報を出し渋る可能性がある」と話す。匿名加工情報の基準を業界の自主ルールに任せる方針についても「ビッグデータを使おうとしても、どこまで許されるのか、業界もルール作りに困るだろう。制度が機能不全に陥る恐れがある」と指摘する。

 個人情報保護委員会の議論は非公開で行われ、配布資料と議事要旨を後日、ホームページに公開している。議事録は作っているが、情報公開請求をしなければ入手できない。

 事務局は「独立機関の公正取引委員会も同様の運用。今のところ議論の公開は考えていない」としている。

 NPO法人・情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「議事要旨には各委員の短いコメントが紹介されているだけで、議論をきちんとしているのかも読み取れず、委員会が信頼に足るのかの判断はできない。公取委は委員会の下の研究会などの議論内容は分かるようになっており、同様の対応とは言えない」と公開度を高めるよう求めている。


改正個人情報保護法のポイント

・個人の身体的特徴を変換したものや個人が特定できる番号などを「個人識別符号」として個人情報に

・人種、信条などの「要配慮個人情報」は本人同意なしに取得・提供することを原則禁止

・個人を特定できないように加工した「匿名加工情報」は本人の同意がなくても提供可能に

・データベース提供罪を創設

・5000人以下の事業者も法規制対象に

・事業者を監督する「個人情報保護委員会」を新設


個人識別符号の例

〇指紋・顔・歩行動作のデータ

〇旅券・年金・運転免許証番号

〇マイナンバー

〇保険証の番号・記号

×携帯電話番号

×国家資格の登録番号

 ※○は個人識別符号となり、×はならない見通し

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