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<中国>ネット統制、法律や通達続々 体制の維持・強化図る

中国浙江省のインターネットカフェでオンラインゲームを楽しむ若者たち。6億人以上がネットを利用する中国ではネット管理を強める法規制が相次いでいる=AP

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 中国当局がインターネットの管理を強化し、独自のネット統制を盛り込んだ法律や通達を次々に定めている。欧米の影響を受けた言論がネット上で広がることに対し当局が警戒を強め、統制によって体制の維持を図る狙いがあるとの見方が出ている。【北京・石原聖】

海外ドメイン接続不可?

 中国は昨年7月、国家安全法を制定して、ネットや文化・イデオロギーなど広範な分野で国家の安全を確保すると規定した。同年12月には反テロ法を成立させ、当局が捜査で通信の暗号キーが必要になった際、プロバイダーに事実上、提供を義務づけた。「安全」や「テロ」の定義は曖昧で、当局の解釈次第で範囲が広がる恐れがある。

 今年3月には、ホームページなどの住所に当たる「ドメイン」の管理を強化するドメイン管理弁法改正案を公表した。施行されれば「.jp」などの海外登録ドメインには、中国から接続できなくなる可能性がある。ネットへの書き込みの実名制や突発事件の際にネットを遮断することなどを盛り込んだネット安全法案の審議も進んでいる。

 これまでも中国は「防火長城」と呼ばれるファイアウオールを設けて、グーグルなど検索エンジンへのアクセスを規制したり、不適切な書き込みを削除したりする検閲システムを導入してきた。

 立法による規制強化について、日本、米国、カナダ、ドイツ、欧州連合(EU)の駐中国大使が今年1月、「商業活動を阻害し、人権を守るという国際法上の義務を破る可能性がある」との意見書を中国当局に提出した。ドメイン管理弁法が改正されるなどすれば、影響は中国企業にも及びそうだ。3大IT企業の百度(バイドゥ)、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)はドメインを米国で登録しているからだ。

外資提携を審査、検閲も

 通達による規制も進む。3月には「ネットワーク出版サービス管理規定」が施行された。新聞・書籍や音響・映像作品のデジタル版▽文学、芸術、科学領域に関する知識・思想性のテキストや画像、地図、ゲーム、アニメ、音響・映像に関する読み物−−などについて、合資を含む外資や海外組織・個人による営業を禁じた。中国の個人・企業が外資と提携するには当局の審査が必要だと定め、違反者には罰則も設けられた。

 通達は事実上、ネットのあらゆるコンテンツに当局の検閲の網を掛ける。ある法曹関係者が「通達で管理を強めることは役所の違法な職権拡大だ」とネットに投稿し、政府の法制部門に審査を求めたが、その書き込みは削除された。

 一連の管理強化策によって、外資コンテンツが閲覧できなくなるなどの影響は、今のところ表面化していない。

 厳格には適用されないのではといった楽観論もあるが、今年から2020年までの「第13次5カ年計画」には、過去の計画にはない「ネット世論の管理、操作の強化」が盛り込まれている。

「世論誘導インフラ」 国際ルール主導も狙う

 中国は既存のメディアに比べ、ネットの規制は緩やかだと言われてきた。どうして規制を強めるようになったのだろうか。専門家は「欧米の価値観の影響を受けていて、体制に不都合な言論が、より問題視されるようになった。習近平指導部は制限を設けないとまずいと感じているのだろう」と見る。

 習国家主席は13年8月、「ネット世論形成で主導権を掌握することは、イデオロギーや政権の安定を保障するために必要だ」と発言した。その前後から、ネット上の政治的言動の規制を強めるようになった。

 統制強化には体制内からも異論がある。今年2月に習氏が国営メディアを視察した際、「官製メディアは党を代弁せよ」と要求したことに対し、不動産王の共産党員である任志強氏が「『人民政府』はいつ党の政府に変わったのか」と中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で批判した。任氏は「公開の場で党の方針に背く言論を発表した」として処分された。7月には改革派の言論を代表する月刊誌「炎黄春秋」が、当局の人事介入に反発して「廃刊」を発表した。

 中国のネット利用者は昨年末現在で6億8800万人に上る。北京の大学でメディア学を教える教授は「ネットでは体制に不都合な言論や活動の呼びかけが横行している。国家の安全を守るのに重要なインフラとして、統治強化に乗り出した。技術的に管理できるので、言論統制もしやすい。体制派の意見を流してネット利用者を政府支持に誘導し、体制の維持・強化につなげたいのだろう」と分析する。

 ネットは国際ルールが明確になっていないため、中国がルール作りを主導するという思惑もありそうだ。ネット技術分野で世界的な割り当て調整を行う米国の非営利法人「ICANN」に対し、中国では「米政府の影響下にあり、私物化されている」(復旦大学の沈逸・副教授)との批判が広がっている。習氏はネット空間にも主権があると主張し、14年から「世界インターネット大会」を主催して、管理された中国のネットをアピールしている。北京の外交関係者は「ネット管理による国内統治の強化と並行し、中国式モデルの国際化も進めている」と話す。


中国のインターネットを巡る最近の動き

2013年 8月 「全国宣伝思想工作会議」で習近平国家主席が「ネットは世論闘争の主戦場」と指摘

  14年 2月 ネット政策の司令塔となる「党中央インターネット安全・情報化指導グループ」が設立され、習氏がトップに

      5月 ネットや訴訟を通じて社会変革を促した弁護士の浦志強氏を「騒動を起こした」容疑で拘束

  15年 3月 中国の大気汚染を告発し、公開から1日で1億回再生されたネットドキュメンタリーが閲覧禁止に

      5月 「中央統一戦線工作会議」で習氏がフォロワーの多いブロガーら「新メディアの代表人物」を取り込むよう示唆

      6月 ネット安全法案の審議開始

      7月 国家安全法成立

     12月 浦氏に執行猶予付き有罪判決

         反テロ法成立

  16年 2月 習氏が国営メディアを視察して「官製メディアは党を代弁せよ」と要求。「微博」で批判した不動産王のアカウントが強制閉鎖される

      3月 新疆ウイグル自治区系ニュースサイトに習氏の辞任を要求する公開書簡が掲載され同サイトが閉鎖される

ネットワーク出版サービス管理規定の施行。ドメイン管理弁法改正案を公表

      4月 「ネット安全・情報化工作座談会」で習氏が「ネット上の善意からの批判を歓迎する」と強調

      7月 改革派の月刊誌「炎黄春秋」が当局の人事介入に反発して「廃刊」発表

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