Listening
<発信箱>間違い探し=長野宏美
米国の選挙では候補者が発言すると、すぐに誇張や誤りを調べ、報じられる。「ファクト(事実)・チェック」と呼ばれる活動だ。
1930年代に新聞や雑誌が正確な情報を伝えるため、専門家を抱えて始まり、その後、政治家の発言を有権者がうのみにしないよう多用されるようになった。今では、主要メディアだけでなく、政治的に中立な非営利組織(NPO)なども情報を発信している。フロリダ州の地方紙が作ったウェブサイト「ポリティファクト」は2008年の大統領選報道でピュリツァー賞も取っている。
今年の大統領選でも監視の目が光り、ポリティファクトは発言を「真実」から「大間違い」まで6段階で評価する。7月末までの主な発言で、うそに近い割合は共和党のドナルド・トランプ氏(70)が70%、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)が28%だった。
トランプ氏は昨年、「メキシコ政府は悪いヤツを米国に送り込んでいる」など、根拠のない「大間違い」を連発したとして、同サイトの「うそつき大賞」にも選ばれた。
党の指名を受けた7月の演説。トランプ氏の挙げた数字はほぼ正しかった。ただ、オバマ政権で治安が悪くなったとし、「全米50の大都市で昨年、殺人事件が17%増えた。過去25年で最大の増加だ」と語った部分は「ミスリード」とされた。殺人が増えたのは一部の都市だったという。
不安をあおるイメージ戦略が通じるのか、メディアの間違い探しで支持が揺らぐのか。事実がどれだけ感情に立ち向かえるのかが問われる選挙でもある。(ロサンゼルス支局)