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社説

シベリア抑留 実態解明に日露連携を

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 「原爆の図」で有名な埼玉県東松山市の丸木美術館で、故四国(しこく)五郎さんの作品展が開かれている。原爆をテーマにした絵や詩で知られる四国さんは、いわゆる「シベリア抑留」の体験者でもあり、極寒の中での木材伐採作業などが描かれている。

 8月23日は「シベリア抑留の日」である。1945年のこの日、第二次世界大戦は既に終わっていたが、旧ソ連の指導者スターリンが旧満州(中国東北部)などから「日本人捕虜」の連行を命じた。国立千鳥ケ淵戦没者墓苑ではきのう、犠牲者を追悼する恒例の集いがあった。

 厚生労働省の推計では、約57万5000人が旧ソ連やモンゴルの収容所で強制労働に従事させられた。抑留期間は最長で11年にわたり、最後の帰還者が日本に引き揚げてから今年12月で60年になる。

 約5万5000人が現地で飢えや病気のため亡くなった。しかし、身元が特定されたのは約4万人、収容された遺骨は約2万柱に過ぎない。

 厚労省は、今年度から人員や予算を増やして調査態勢を強化した。旧満州や朝鮮半島北部、旧樺太(サハリン)での死亡者調査も昨年から始まり、名簿に登載されていたうち959人の身元が特定されるなど、一定の成果も見られる。

 だが、多くの遺族が知りたいと願う抑留の実態解明にはほど遠い。省庁を超えた政府全体としての取り組みや、民間の研究者も含めた官民協力態勢の構築を重ねて求めたい。

 ロシアにも関連資料の発掘を促すなど一層の協力を要請すべきだ。ロシアの研究者も巻き込んで協力態勢を築けば調査はさらに進むはずだ。遺骨収集や墓地整備などでも現地との協力を進めたい。「負の遺産」も連携して解明に取り組めば、日露関係の強化につながるのではないか。

 ゴルバチョフ・旧ソ連大統領が訪日し、初めて抑留死亡者名簿が提供されてから今年で25年になる。この時に締結された「捕虜収容所に収容されていた者に関する協定」をさらに拡充し、調査態勢の強化につなげられないか。年内にも予定されるプーチン大統領の訪日に向けて、ぜひ検討してほしい。

 帰還者の多くが亡くなり、生存者の平均年齢は93歳になった。遺族もまた高齢化している。歴史を次世代に語り継いでいく必要がある。

 京都府舞鶴市の舞鶴引揚記念館に収められた元抑留者の日誌や遺品などが昨年、世界記憶遺産に指定された。国民の関心を高め、歴史の継承につながっていくことが期待される。ほかにも元抑留者が残した資料は数多い。悲劇を繰り返さないために、貴重な記録と記憶をしっかりと後世に伝えていきたい。

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