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クローズアップ2016

18歳成人、民法改正案 変わる大人の定義 消費者被害、懸念も

 法務省は、民法の成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる改正案を来年の通常国会に提出する方針を固め、1日から国民からの意見公募を始めた。国会での成立後3年間の周知期間を見込んでおり、早ければ2020年にも「大人」と「子供」の境界線が変わることになる。国民生活にも多大な影響を与えそうだ。【鈴木一生、早川健人、鳴海崇】

     「政府としては環境整備のための諸政策に取り組んでおり、一定の成果を上げている。早ければ来年の通常国会に提出することも一つの選択肢だ」。1日の記者会見で、成人年齢の引き下げについて問われた菅義偉官房長官は前向きな姿勢をみせた。

     「18歳成人」の機運が高まったのは、昨年6月の改正公職選挙法の成立だ。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、自民党の特命委員会は同9月、「民法の成人年齢も速やかに18歳に引き下げる法制上の措置を講じる」と提言をまとめた。

     改正公選法の施行で、今年7月の参院選では約240万人の18、19歳が有権者になった。法務省幹部は「参院選で若年者の大人としての意識は相当高まったと思う。成人年齢を引き下げる環境は整ってきた」と述べ、「18歳選挙権」の導入が民法改正の動きを加速させたと解説する。法制審議会(法相の諮問機関)が09年にまとめた最終報告書も選挙権年齢の引き下げを前提に「成人年齢を18歳に引き下げるのが適当」としている。

     引き下げられると、18、19歳が親などの同意なくローンやクレジットカードなどの契約ができるようになる。そのため法制審最終報告書は、若年者の消費者被害拡大に対する懸念から対策の必要性も強調した。不当な契約を親が取り消せる未成年者でなくなることで、18、19歳が悪徳業者の新たなターゲットになる恐れもあるからだ。

     では、その課題は解消されたのか。最終報告書は成人年齢を引き下げる時期について、「施策の効果が十分に発揮され、国民の意識として現れた段階」としている。消費者問題に詳しい中村新造弁護士は「法制審が求めるレベルに比べ、若年者の被害対策はほとんどなされていない。スマートフォンの普及などで被害状況も多様化している」と否定的だ。その上で「引き下げのメリットは説得的に示されてはいない。近年、若年者の自立は遅れており、自立を支えたり消費者被害を防いだりする仕組み作りを優先させるべきだ」と指摘する。

     消費者庁も若年者のトラブル拡大を懸念。意見公募が始まった1日、消費者被害の防止や救済に必要な対策について、内閣府の消費者委員会に意見を求めた。同庁によると、民法が改正された場合、若年層と取引する事業者に重い説明義務を課したり、勧誘を制限したりする▽若年層専用の相談窓口を設ける▽消費者教育を充実し、契約を取り消す権利がなくなるなどの知識を浸透させる−−などの対策を想定しているという。同庁幹部は「何らかの特例法制定も視野に入れて議論を詰めていきたい」と話した。

    少年法への波及焦点

     成人年齢が18歳になると、若年者の年齢条項がある212本(14年4月現在)の法律に影響する。このうち「成年」という文言が使用されている155本は特別な措置がない限り、民法に連動して引き下がる。喫煙飲酒に関する法律や少年法の適用年齢は20歳未満とされており連動はしないが、社会的には18歳以上が「大人」となるため、引き下げの可否が焦点となる。

     自民党特命委員会が昨年9月にまとめた提言は、成人年齢の引き下げに伴い、20歳以上(未満)を要件とする法律は「原則として18歳以上(未満)とすべきだ」とした。大人と子供を分ける「国法上の統一性」が必要というのが理由だ。

     特命委は、少年法の適用対象年齢について「18歳未満に引き下げるのが適当」と提言したが、同時に18、19歳にも引き続き保護処分に相当する措置を講じることも求めた。これを受け、法務省は勉強会を設けて議論しているが、具体的な改正作業には至っていない。

     酒、たばこの解禁年齢について、特命委は「医学的見地や社会的影響について慎重な検討を加え、民法改正時までに結論を得る」と棚上げした。健康被害や学校現場の混乱を不安視する声が強いためだ。国民年金保険料の支払い義務は引き下げの対象外としている。

     成人年齢18歳が実現した場合、成人式はどうなるのか。判断は各市区町村に委ねられるが、高校3年時に18歳になる人の多くは大学受験シーズンと重なることになる。東京都港区子ども家庭課の長谷川浩義課長は「開催時期の見直しが必要になるかもしれない」と困惑する。

     海外主要国では成人年齢は18歳が主流だ。米国は州によって異なるが大半は18歳。英仏独3国は1960年代から70年代にかけ21歳から18歳になった。中国は18歳で、韓国は13年、20歳から19歳に引き下げられた。

     法務省の資料によると、成人年齢を18歳とする主要各国では、刑事手続きの面でも18歳以上を少年と扱わないことが多い。しかし、ドイツのように「精神的に未熟」などを理由に18〜20歳であっても、少年と同様の処遇をする制度を設けている国もある。

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