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わいせつ被害NO!

身近な加害者から守るには

 子どもを痴漢などのわいせつ被害から守るための対策などを連載「わいせつ被害NO!」(6月22、29日掲載)で取り上げたが、実際には家庭や学校などで、知り合いからの被害が少なくない。今回は被害者の声を基に、身近な人からの被害に対し、親や周りの大人が気をつけるべき点を調べた。

     東京都の会社経営者の女性(48)は中学生の時、正月に親族が集まって宴会をしていた隣の部屋で、突然、高校生のいとこからキスをされた。頭が真っ白になり、逃げようとしたが、緊張で動けなかったという。親には言わなかった。親族間でもめ事を作りたくなかったのと、「あなたに隙(すき)があった」ととがめられそうな気がしたためだ。

     ●友人や家族、親族が

     日本性教育協会の「青少年の性行動全国調査」(2011年)によると、「望まない性的行為」の被害経験がある中学生女子の約6割、男子では全員が、相手(加害者)は友人や家族、親戚など顔見知りだったと回答している。小学生以下の子どもは行動範囲が狭くなるため、顔見知りの割合が高まると見られる。

     女性は「被害に遭うことを想定し、自分の身を守るすべを学んでおきたかった。家族で性について話せる環境なら、母親にも言えたかも」と、30年以上たった今でも悔やむ。

     「家庭内や親族間の場合、被害者はジレンマを感じて打ち明けられない。恥ずかしさや罪悪感に加え、被害を明かして母親を傷付け、家族内で自分の居場所を失うことを恐れている」。性虐待の問題に詳しい愛育研究所(東京都港区)の客員研究員、山本恒雄さんは指摘する。そもそも低年齢では自分の身に起きたことが分からない。「性の知識がないし、信頼する人が自分に嫌なことをするはずがないと思っている」

     ●告白、適切に捉えて

     山本さんによると、子どもは試しに信頼できる相手に被害の一部をほのめかすこともあるが、周囲との関係を気にして隠しがちだ。被害を正確に告白できるのは思春期以降や数年後といい、被害がエスカレートしている可能性もある。「幼い時のあいまいな告白を適切に捉えることが重要」という。

     では、「サイン」はあるのか。個人差や発達段階の違いはあるが、不眠や頭痛、腹痛などの体の不調、登校・登園拒否や年齢にそぐわない性的な言動、暴力性が高まるなどのさまざまな問題行動の背景に、性虐待が影響していることもある。また、解離性同一性障害(多重人格障害)の多くは性虐待被害者という。

     ●「嫌」と言う、徹底

     しかし、「現実には周囲が気付くのは難しく、仮に被害を疑っても、隠したいと考える人が多い」と山本さん。すべての子どもに「嫌なことをされたら嫌と言いなさい」などと教える方が、子ども自身の気付きや自己防衛につながり効果的という。

     「学校は安全だと思っていたのに、完全に裏切られた」。関東地方の女性(41)は、小学生の娘(9)が被害に遭った強制わいせつ事件を思い出して憤る。担任だった40代の男性教師は、「高い高い」をして遊ぶなど、一部の児童に人気があった。だが、女子児童をひざの上に乗せていたといううわさや、娘が「先生から『ミニスカートが似合うね』と言われた」と話すのを聞いて違和感を覚え、学校に相談した。しかし校長や教頭は「問題ない」の一点張り。具体的な被害が分からないまま警察署を訪ねた。

     娘は女性警察官に、親にも言えなかったことを打ち明けた。警察から「裁判になれば表ざたになり、二度、三度と被害が身に降りかかる」と告げられたが、告訴に踏み切った。他にも被害者はいたが、周囲の目を気にして告訴を諦めたという。

     裁判の結果、元担任は懲役2年の実刑判決(求刑・3年6月)を受けた。女性は学校が問題を「ないもの」にしようとしたことにショックを受けたほか、「逆恨みされないか、常に不安はつきまとう」という。

     ●第三者にも相談を

     文部科学省によると、13年度にわいせつ行為で懲戒処分を受けた公立学校の教師は205人。NPO法人「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク」代表の亀井明子さんは、「教職員の不祥事は校長も処分対象になるため、もみ消しはよくあること」と指摘する。それでも子どもが被害に遭ったかもしれない時は、まず校長に相談するのが一般的という。中には適切に対応する校長もいる。また、校長に話す際は、同ネットや信頼できる弁護士など第三者にも相談していることを告げた上で、同時に教育委員会に相談するのも一つの手だ。

     一方で、必要以上に子どもから話を聞きだそうとするのは避けるべきだ。仮に事件として扱われる場合、子どもは大人の誘導を受けやすいため、被害状況の説明が二転三転すると、証言の信ぴょう性にも関わってくる。被害に気付くことは大切だが、その後は警察や児童相談所などにつなぐことが大切になる。【鈴木敦子】<イラスト・日比野英志>


    学校でのセクハラの主な相談先

    ・NPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク

    電話06・6995・1355 毎週火曜午前11時~午後7時

    ・NPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク

    電話03・5328・3260 毎週土曜午後2~7時

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