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がんの補完代替医療/下 ヨガ、漢方 治療の不安和らげ

漢方薬について話す今津嘉宏医師=東京都港区で

 西洋医学を補う存在の「補完代替医療」。効果を科学的に検証する臨床試験も進みつつある。実際には、どのように利用されているのか。

     乳がん患者で大学職員の廣瀬満重さん(55)=東京都=は週2〜3回、仕事を終えた後にヨガのスタジオに通う。2005年、がんは初期で見つかったが、手術を経て3年を待たずに骨や肺などに再発転移。以後、病はゆるやかに進行するが、抗がん剤治療を続けて今に至る。

     ●生活の質改善

     ヨガは手術から1年半ほどたった時、「何か体に良いことを」と始めた。それまで運動とは無縁だったが、「人と比べずに自分自身を見つめる」というヨガの考えに共感。副作用がつらい時期は中断したものの、10年近く続けてきた。ヨガで深く呼吸し、汗を流した後は体がすっきりとする。また「瞑想(めいそう)」や「ヒーリング」を習得したこの2年は精神的にも大きな変化があったという。

     「以前は同病の仲間が旅立つたびにひどく落ち込んでいました。今は、ものごとをネガティブに考えることがなくなった」。主治医も「気持ちよく体を動かすのはいいこと」と肯定的で、インストラクターにも再発治療中であることは伝えている。「常に自分の体と相談し、無理をしないように」と指導を受けながら、最近は指導者養成コースに参加するまでに上達した。

     米国の07年国民健康調査(NHIS)によると、ヨガは「補完療法」として成人では6番目によく用いられているという。臨床研究も進み、その結果は日本で出版された「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス」にも反映された。本では、「ヨガは乳がん患者の全般的なQOL(生活の質)を改善する可能性がある」などと結論づけられている。

     補完代替医療としてのヨガの普及を目指す「ルナワークス」代表の岡部朋子さんも、米国でヨガを学んだ。国際ヨガセラピスト協会(IAYT)公認のヨガ療法士として、「乳がんリハビリヨガ」の指導者養成講座などを行う。「ヨガの呼吸は自律神経を安定させることが分かっています。呼吸法や瞑想で内面を穏やかにすることで、病気によるつらい症状も軽減できるのでは」。医師とも連携を取りながら、「メディカルヨガ」でがん患者のQOLを支えたいと岡部さんは話す。

     ●全身状態良好に

     補完代替医療の一つで、がん拠点病院に専門外来が設けられるのが「漢方」だ。

     手術や抗がん剤治療と違い、「体に優しい」「副作用が少ない」といったイメージもあり、漢方に期待を寄せる患者は少なくない。「昔ながらの」というイメージもあるが、日本で正規に使われる漢方薬は「言い伝えや伝承ではなく、今の科学で証明されたものだけ。伝統的医学として日本で独自に発展したもの」と、「漢方腫瘍内科」を掲げる「芝大門いまづクリニック」(東京都港区)の今津嘉宏医師は説明する。

     漢方薬はがん専門医の多くが処方しているが、薬剤師も含め、漢方医学を修めた人は少ないという。「多くが経験則から処方され、科学的な研究は遅れていました」。もとは外科医だった今津さんも10年ほど前、術後の腸閉塞(へいそく)に「大建中湯(だいけんちゅうとう)」という漢方薬が有効と聞き、患者に処方したところ効果を実感。「その頃、大腸がんの手術を受けた患者でこの漢方を使った人は、入院日数が短いことが分かっていた。そこでようやく研究が始まりました」

     結果、「大建中湯」のサンショウとショウガの成分が、ごく少量で反応して術後の合併症を防ぎ、腸の働きを補うことが分かったという。「患者のためなら」という臨床現場の医師の情熱で、漢方の新たな活用がなされるようになった。ただし、がんは漢方では治らない。がん患者に対して漢方は、薬の副作用による食欲低下や手足の痛み・しびれを改善したり、内臓の機能を助けて全身の状態を良くしたりするため使われる。その結果、本来のがん治療を続けることが可能となり、治癒率を上げて再発を減らすことにもつながる。ただし代替医療が本来の治療に影響を及ぼすことがあるため、始める前に主治医に相談しておくことが望ましい。

     ●迷ったら相談を

     補完代替医療を研究する大阪大大学院医学系研究科の大野智准教授は、「患者は、医師から『絶対に大丈夫』と言ってほしい。でも医療に絶対はありません」。その不安を埋める存在として、補完代替医療を利用する人も多いのではと推測する。

     補完代替医療の利用について判断がつきかねる場合は、全国のがん診療連携拠点病院等に備わる「がん相談支援センター」に相談できる。自分がかかっていなくても、電話で応対してくれる。また、厚生労働省助成の研究班による「がんの補完代替医療ガイドブック」(第3版)がネット上で公開されており、健康食品をはじめとする最新情報を入手できる(「がんの補完代替医療ガイドブック第3版」で検索可能)。

     補完代替医療の科学的根拠が明らかでない場合は、利用する患者の価値観や死生観が問われる。「結果がどうなっても後悔しない、と自分自身で納得がいく選択を」と大野さんは強調する。【三輪晴美】

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