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余録

先の大戦で逆境の英国を奮い立たせた…

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 先の大戦で逆境の英国を奮い立たせたチャーチルの主治医モラン卿(きょう)の日記には、当時の首相の狭心症らしい発作の記述がある。「突然、息切れがして、心臓が痛くなり、左腕に痛みが広がった」▲なんとモランはその時本人に病名を告げず、安静すら勧めなかったという。チャーチルは「僕に休めと言ってはダメだ。休めない。他に誰にもできないことがある」と話し、モランはうなずいたのだ(小長谷正明(こながやまさあき)著「医学探偵の歴史事件簿 ファイル2」岩波新書)▲医師の倫理に反する行為だが、モランはその歴史的使命のために“戦死”をいとわぬ意志に従ったらしい。もちろん再発作に備えた措置はとっただろうが、「チャーチルの狭心症」は他の誰も知らない秘密となった。政治指導者の病気とその措置は世界史をも変える▲こちらはまだ指導者になってもいないのに、その体調不良に全世界が息をのんだ。同時多発テロの追悼式典を退席して肺炎との診断が発表された米大統領選候補のクリントン氏のことである。衝撃が走ったのは、むろん対抗馬がかのトランプ氏という選挙戦だからだ▲「彼女が選挙運動に戻ることを願う」。さすがに毒舌は控えたトランプ陣営だが、クリントン氏の健康不安はかねて指摘してきたところだ。その争点化は避けられそうになく、逆にクリントン陣営はタフなところを見せつけて懸念の払(ふっ)拭(しょく)をはからねばならなくなった▲チャーチルの心臓は戦後まで鼓動を続け、歴史は今日あるようになった。この世には全人類の運命を左右するような一個人の体調不良もある。そのことに改めて胸を突かれた米大統領選の秋である。

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