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豊洲盛り土問題 信頼を大きく損なった

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 東京都の築地市場からの移転先となっている豊洲市場の安全性に疑問が投げかけられている。

 これまでの都の説明と異なり、主要な建物の下に土壌汚染対策のための盛り土がされず空洞になっていることが発覚した。

 なぜ、こうした事態になったのか。都は経緯を検証し明らかにするとともに、市場の安全性についても、改めて丁寧に説明すべきだ。

 2001年の移転決定後、豊洲市場敷地の地下水や土壌から、環境基準を大幅に上回る極めて高濃度のベンゼンなどが検出された。都は土壌汚染対策のため、07年に専門家会議を設置した。専門家会議は08年、建物下を含め、敷地全体で深さ2メートルの土を入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土を行うよう求めた。

 敷地全体をきれいな土に入れ替えることが、いわば提言の核だった。

 一方、都は11年、建物の下に地下空間を設ける基本設計を内々で決め、地下が空洞の設計図に基づき、盛り土をせずに建物を建設した。

 一番の疑問は、専門家会議の提言がなぜ実行されなかったかということだ。どの部署の誰の判断だったのか。専門家会議とは別に設けられた汚染対策工事の工法を評価する技術会議に対しても、都は盛り土しないことを説明してこなかったという。さらに都はこれまで、建物の下に盛り土がある説明図をホームページに掲載し続けてきた。

 提言を無断でほごにしただけでなく、その事実を隠そうとした疑いがあると指摘されても仕方ない。市場関係者や都民に対する二重の意味の裏切り行為だ。

 地下空間の天井部分は厚さ35〜45センチのコンクリートで、これは土壌汚染対策法の安全基準を満たし、安全性に問題はないと都は説明する。

 しかし、ベンゼンは発がん性もある危険な化学物質だ。常温でも気化しやすくコンクリートで覆っても割れ目があれば漏出の恐れがある。また、盛り土の有無で拡散の方向や広さが変わるという。現状のままで、鮮魚などに付いたり、市場で働く人や訪れた人が吸い込んだりする危険はないと言い切れるのか。

 一部建物の地下の床に水たまりも確認された。仮に地下水ならば汚染が心配だ。

 市場の安全性への信頼が根底から揺らいでいる。このままでは、858億円をかけた土壌汚染対策が水泡に帰してしまう恐れさえある。

 小池百合子知事は、専門家会議を再開し、特別調査チームと併せ安全性の検証をしていくことを明らかにした。一からの総点検は当然だ。

 都の対応への不信感が強まっている。徹底した情報公開がなければ信頼は取り戻せない。

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