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華恵の本と私の物語

/2 ぼくらが大人になる日まで

 かえれない。

     どうしよう。終電しゅうでんわっちゃったなんて……。

     くるまのヘッドライトが通過つうかしていく。ガードレールにりかかり、足元あしもとのサンダルを見下みおろす。さむい。運動靴うんどうぐつにすればよかったかも。

     携帯けいたいひらき、友達ともだちからのメールを見返みかえす。

     [こんな時間じかん新宿しんじゅくにいたらあぶないから! はやかえりなよ]

     何度読なんどよかえしても、ためいきる。

     財布さいふなか確認かくにんすると、千円札せんえんさつ一枚まい小銭こぜにはない。いえまであるくと、一時間以上じかんいじょうかかる。

     道路どうろし、まっすぐをあげる。タクシーが、ゆっくりとわたしまえにすべりこむ。

     タクシーに、はじめてひとりでる。大丈夫だいじょうぶ、もう十二歳じゅうにさいだもの。

    「どちらまで?」

     白髪混しらがまじりの運転手うんてんしゅさんがあつみのあるこえう。

    千円せんえんしかないので、これでけるところまでってください」

    「おうちは、どこかな?」

    「えっと、□□……」

     くるま発車はっしゃし、まどそとのネオンのあかりがながはじめる。

    「おかあさんにでも、おこられたのかな?」

     ちょっとちがう。

    ははとケンカして……」

     おこられたのではない。ケンカを、したのだ。そこは、ゆずれない。

    「そうか。大変たいへんだったね」

     あたたかくつつこえで、運転手うんてんしゅさんはそうった。

     住宅街じゅうたくがいはいった。もうこのあたりからなら、あるける。メーターをると、1070えんとなっていた。

    「あ、ここでいいです!」

    「おっとごめんね、メーターをるのをわすれていた。今夜こんやはおかね、いいから」

    「え?」

    「うちまでおくるから。あぶないから、もうよる出歩であるいちゃだめだよ」

     だめだよ、だって。大人おとなってそういうはなかたをするからムカつく。けど、おかねいらないだなんて……。

     マンションのまえいた。うちのリビングのまどあかるい。おかあさん、まだきてるんだ……。

     運転手うんてんしゅさんはいて、「ちゃんとおかあさんにあやまるんだよ」とった。わたしは、うつむいて、「はい」とこたえた。

      +  +  +  +  +

     『ぼくらが大人おとなになるまで』にてくる小学しょうがく六年生ねんせいたちは、中学受験前ちゅうがくじゅけんまえにみんなでこっそり冒険ぼうけんます。んでいて、うらやましくなりました。わたしにも、一緒いっしょなに計画けいかくをたてる友達ともだちがいたら……。

     大人おとなへの腹立はらだたしさは、成長せいちょうしたい気持きもちのあかしです。それはがんばるちからになります。ほんなかにも、同志どうしはたくさんいますよ。<毎月第まいつきだい日曜日掲載にちようびけいさい


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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