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<記者の目>「貧困」女子高生バッシング=西田真季子(生活報道部)

「貧困」女子高生に対するバッシングへの抗議デモ=東京都新宿区で8月27日、宮間俊樹撮影

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当事者像は多様だ

 子どもの貧困問題を扱ったNHKのニュース番組(8月18日放送)で、経済的理由から専門学校への進学を諦めた体験を語った女子高校生に対し、インターネット上で「貧困ではない」といった書き込みや人権侵害に当たる中傷が相次いだ。デザイン系の仕事を夢見る彼女の自室に、アニメグッズやイラスト用ペンがあったのが理由だ。貧困問題を取材してきた記者として、ステレオタイプの「貧困像」が根強く残ることに驚くとともに、私自身の報道のあり方にも問題があったのではないかと考えている。

「生活苦」とは「飢餓状態」?

 貧困問題の取材を始めて7年目になる。生活保護世帯の中高生、路上生活を送る人、生活保護を受けて暮らしを立て直し仕事を再開した人、ブラック企業に勤めて体を壊し失業した人、ひとり親家庭の母親、さまざまな当事者に取材し、話を聞いてきた。

 子どもの貧困に直面しやすいひとり親家庭を取材した時、ある母親が仕事と家事に追われる中、「時々、弁当を買う」と語った内容は記事に入れなかった。同様の話を以前に書いた際、読者から「ぜいたくだ」と批判されたことがあるからだ。生活保護を受けている人の話で「スーパーで安売りの品を買って自炊している」と書けば、「もっと切り詰められる」と反論が届いた。「売れ残りの廃棄食品をもらえばいい」といった意見が来たこともある。

 詳細な生活状況の記載がプライバシーに関わる場合もある。取材に協力してくれた人たちが誤解され、不当なバッシングを受ける引き金となりかねない生活の細部にわたる描写を、私は避けた。それでも、全世帯を所得順に並べ、その真ん中に位置する世帯の半分(2012年は122万円)に満たない「相対的貧困」状態にあることや、「生活が苦しい」と実感しているのは事実であり、読者にも伝わると考えていた。

 しかし、一部の人たちの「貧困像」は、容易に想像できる「食べる物にも困る」飢餓状態などを示す表現「絶対的貧困」のままだ。

 8月27日、女子高生に対するバッシングに反対の声を上げるデモを取材した。参加したある女性(24)は、父が失業し、奨学金を得て進学。いわゆる「ブラック企業」に勤めたが病気になり、退社して傷病手当で暮らしていた。女性は「世間では『貧困像』が出来上がっている。それに見合う人しか声を上げてはいけない、というのでは私たちは苦しいままだ。貧困状態にある人にも、いろんな人、いろんな生活の仕方があることをもっと見せたい」と話した。

 バッシングを恐れ、詳細な生活や趣味について書くのを避け、今の日本にある多様な貧困の形を伝えきれていなかったことに、私は気付かされた。分かりやすい貧困の姿だけを報じ、「貧困とはこういう生活をしている人だ」という考え方を無意識に社会に広めていたかもしれない。

事後的対応よりリスク考えたい

 ひとり親家庭の母親が弁当を買うのにも理由がある。子育てと不安定な雇用で時間的にも肉体的にも大きな負担を抱える中、病気で倒れて働き手がいなくなり、更に貧しくなることを避けるための手段の一つなのだ。

 長年路上生活を送り、今は生活保護を受けている男性の部屋を訪ねた時、壁に電車の写真の付いたカレンダーが飾ってあった。男性は子供の頃から電車が大好きで、「壁一面に何種類もの電車のカレンダーを張れるように自立していきたい」と話してくれた。人によってはカレンダーも「ぜいたく」と言うかもしれない。だが、趣味が働く意欲や喜びにつながり、少しずつでも仕事を始めることができるきっかけとなるのだ。

 現代の日本では、絶対的貧困状態にある人の割合は限りなく低い。その母親も男性もそこまでの飢餓状態ではないが、明らかに生活は貧しく、「ぜいたく」と批判される内容にも納得できる理由がある。

 子どもの貧困を研究する北海道大教育学研究院の松本伊智朗教授は「貧困とは、社会生活を営んでいく上での『必要』を欠くこと。何が必要かはその社会の文化・生活様式によって決まるから、貧困の定義は本来相対的なものだ」と語る。その上で「貧困対策は事後的な対応だけではなく、予防的な観点が重要。特にひとり親世帯など貧困リスクが高い層への施策がカギになる」と強調する。

 貧困リスクを抱える層が声を上げやすい社会を作り、最底辺へと押しやらないことこそが、未来の社会にとって利益につながるはずだ。そのためにも多様な当事者像を伝えていくことが大切だと思う。

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