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余録

弟が兄に借りた釣り針をなくし…

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 弟が兄に借りた釣り針をなくし、海(わたつみの)神(かみ)の宮殿を訪れて取り戻すのは古事記の山幸彦(やまさちひこ)と海幸彦(うみさちひこ)の物語だ。類話はパラオやインドネシアのスラウェシ島、ケイ島などに広く分布しているという。南方の島々から渡ってきた説話らしい▲山幸彦と海幸彦の神話においては、釣り針を「鉤(ち)」「さち」という言葉で呼んでいる。チは神秘的な霊力を表す語だという。つまり古代の人たちは釣り針に宿る霊力によって獲物を得ることができると信じていたらしい(次田真幸(つぎたまさき)全訳注「古事記」講談社学術文庫)▲従来の世界最古の釣り針の出土地は先の釣り針伝説の島々と近い東ティモールだった。時代はずっと昔の旧石器時代で、釣り針に霊力を求める精神文化があったかどうかは知らない。ただ今度発見されたさらに古い釣り針の美しい弧はまるで聖なる祭具のようである▲先ごろ沖縄県南(なん)城(じょう)市のサキタリ洞遺跡で出土した2万3000年前の貝製の釣り針のことである。これは巻き貝の底部を削って作ったもので、幅14ミリの丸い鉤(かぎ)は貝殻の光沢を失っていない。この最古の釣り針の発見は英BBCでも報じられ、世界的ニュースとなった▲遺跡からはカニのはさみや巻き貝の殻、海魚やウナギの骨も出土していて、とくに旬(しゅん)のカニには目がなかった食生活もうかがえる。人類が大陸から海洋の島々に移動し始めたのは約5万年前というが、釣りの技術は西太平洋のかなり広範囲に広がっていたわけである▲「釣りの話をする時は、両手をしばっておけ」は手を広げての釣(ちょう)果(か)自慢をからかうロシアのことわざという。旧石器人も釣り人のホラには悩まされたのだろうか。

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