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 戦前もノーベル賞をとっておかしくなかった日本人は北里柴三郎(きたざとしばさぶろう)や野口英世(のぐちひでよ)ら何人かいる。うち最も惜しかったとされる1926年の医学生理学賞だ。この時、山極勝三郎(やまぎわかつさぶろう)と市川厚一(いちかわこういち)のタールによる発がん作用研究は最終選考まで残った▲受賞者は寄生虫の線虫による発がん作用を発見したデンマークのフィビゲルだった。だが後年になってそれがごく一部のネズミに見られる作用で、一般性はないと判明する。数少ないノーベル賞の誤授賞の一つだったのだ▲くり返し落胆させられてきた日本の医学界からは「人種差別でないか」という声も起こるほどだったという。時代は変わってそのちょうど90年後、日本人への2年連続の医学生理学賞の授与、それも単独授与という大隅良典(おおすみよしのり)東京工業大学栄誉教授のノーベル賞である▲「オートファジー」といっても大方は何のことかと戸惑おう。むろんその一人たるコラム子があわてて調べたところ、生物を形作る細胞が無用になったたんぱく質、いわばごみを分解して再利用する作用という。それを遺伝子レベルから解明したのが受賞業績らしい▲有用なものを作るプロセスと違い、ごみのリサイクルの研究は人気がなかったようだ。「人がやらぬことを自由に研究したい」とはその初心という。このオートファジーにかかわる遺伝子の発見が、がんや老化の抑制をめぐる知見を開いたのだからごみの始末は大切だ▲何も前のめりの野心的な知性だけが大発見をなすのではない。ちょっと斜め向きに自由を求める知の働きによって開かれる宇宙の真理もある。むろん他人が見向きもせぬ「残り物に福」もその一つだ。

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