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社説

廃炉費用の負担 「新電力に転嫁」は筋違い

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 政府が原発の廃炉費用を、電力小売りの全面自由化で新規参入した電力会社(新電力)に負担させるための議論を始めた。

     大手電力会社の負担を新電力に転嫁するもので、結局は電気料金に上乗せされる。自由化の前提である競争原理をゆがめかねない案だ。

     もっとも廃炉は、脱原発依存のためにも滞っては困る。政府は脱原発の道筋を描く中で、費用負担の問題を議論すべきだ。安易な転嫁は筋が違うと言わざるを得ない。

     議論は経済産業省の有識者委員会で始まった。政府は年内にも結論を出す考えだ。

     廃炉にかかる費用は、大型原発で1基800億円程度と見込まれる。大手各社は、その費用を40年かけて積み立てているが、今後、積み立てなければならない費用が約1兆2000億円残っている。

     大手各社はこれまで、電気料金に上乗せしてその費用を徴収してきた。しかし4月に始まった自由化で新電力のシェアが拡大すると、その徴収が滞る可能性がある。そこで出てきたのが今回の転嫁策だ。

     新電力に乗り換えた消費者も、過去には大手が原発で発電した電力を使っていたのだから廃炉費用も負担すべきだ、というのが政府の理屈らしい。しかし消費者はこれまでも電気料金に上乗せされる形で負担してきた。二重取りは理屈に合わない。

     新電力が今後、大手から電気の融通を受ける場合に、廃炉負担を分担するという話であればあり得る。政府は新電力が割安な原発の電気を調達しやすくなる新市場を創設して、批判をかわそうとしているようだ。

     しかし原発に依存しない電気を求める消費者もいる。電力会社を選べる自由化は、そうした要望にも応えるものだ。政府が、電力会社に電源構成比率を公表するよう指導しているのもそのためだろう。一律の負担転嫁では国民の理解は得られまい。

     そもそも政府は、原発のコストは安いと説明してきた。それは廃炉費用まで含めての話だった。今回の転嫁問題で、その正当性も揺らいだと言える。

     政府は、重大事故を起こした東京電力福島第1原発の廃炉費用についても議論を始めた。東電が2兆円の費用を負担する計画だが、それを大幅に上回るのが確実だからだ。

     東電管内で参入した新電力に負担を求める案が浮上しているが、事故に伴って増加したコストの転嫁は、理屈がつかない。一段と慎重な議論が必要だ。

     いずれにしても廃炉費用の問題は避けて通れない。政府は脱原発依存という目標を示した上で、国民負担のあり方を正面から議論すべきだ。

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