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工藤 美代子・評『異端者』勝目梓・著

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苦しみの果てに手にする自由で爽やかな老境

◆『異端者』勝目梓・著(文藝春秋/税抜き1700円)

 人間が生きるのは最長でも100年くらい。その間の変化は想像を絶する速さである。

 本書の主人公は戦争で父を失い、母とふたりで甲府の親戚の家に身を寄せていた。やがて上京して大学に進学する。貧しい生活の中で部活とアルバイトに励み、卒業すると出版社に就職する。そこを定年まで勤め上げて退職し、房総の海の近くで独り暮らしをしている72歳の男だ。

 表面的にはこれだけの平凡とも言える生涯で、さしたる大きな事件もなければ、世間を騒がせるような派手な醜聞もなく、人生が終わろうとしている。

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