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Listening

<記者の目>AIの仕事 人間の仕事=小川祐希(東京経済部)

人工知能を活用し、道案内や接客をする日立製作所のロボット「EMIEW(エミュー)3」

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恐れずに使いこなす

 開発が加速する人工知能(AI)。トップ棋士に勝利して脚光を浴びた「アルファ碁」のようなケースが相次ぎ、暮らしや働き方を大きく変えるのか。現場を同僚と取材した企画「密着けいざいAIの今」を8、9月に連載した。

 AIに仕事を委ね、人間が労働から解放されると、生活がより豊かになるかもしれない。人口減少時代の人手不足解消にも役立つだろう。とはいえ、未来がばら色に染まるとは限らない。AIが人間の能力を超え、仕事を奪うという予測もある。ただ、技術の進歩で社会を発展させてきたのが人類の歴史だ。AIに振り回されるのではなく、上手に使いこなせるすべを探りたい。

 取材で驚いたのは「AIでここまで便利になるのか」ということだ。連載で取り上げたのは、本人に代わってコミュニケーションができる「パーソナルAI」。東京のベンチャー企業、オルツが開発している。本人のメールなど大量のデータから性格や言葉遣いを学習し、そっくりの受け答えをする。2020年には簡単なメールの返信ができるようにして実用化する。いずれはロボットに搭載しオフィスの秘書業務などで本人の代わりに働くようにするという。

 米倉豪志・最高技術責任者は「人間は長年、食べるために働かざるを得なかった。そんな縛られた生活から解放される」と強調した。空想にとどまっていた世界に近づくような気がした。

物事の最終判断、下すのは人間

 AIの対象は幅広い。注目されている自動運転車のほか、家事や介護を代行するロボット、受付や窓口業務といったビジネスの現場などでの活用が想定されている。

 AIが労働を引き受ければ、少子高齢化で人口減少に直面する日本の働き手不足を補える。労働力が足りなければ、企業の生産活動や店舗展開、製品の輸送業務などに支障をきたす。政府もAIによる労働力確保を成長戦略の柱の一つに位置づけている。

 一方、人間の仕事が奪われるのではという不安はつきまとう。10〜20年後には日本の労働人口の49%がAIやロボットに置き換えられるという試算も出ている。45年にAIが全人類の知能を超えるとの予測もある。米未来学者、レイ・カーツワイル氏が唱えた「特異点」だ。

 連載では、この問題についても、AI開発に最前線で取り組む研究者らに聞いた。多くは「人間の仕事の質は変わるが、仕事がなくなることはない」とみていた。どれだけAIを活用する時代になっても「物事の最終判断にはAIを使う人間が必要」(富士通AI活用コンサルティング部の山影譲部長)だからだ。

 引き合いに出されるのは馬車と自動車の関係だ。自動車の登場で馬車は姿を消し、御者の仕事もなくなったが、自動車の運転手が必要となった。自動車の製造や整備の仕事も生まれ、雇用は拡大した。AIで仕事が置き換えられても、AIを開発したり、管理したりする技術者の需要が増えると考えられている。

 また、AIはデータを統計処理しているだけで物事の意味は理解していない。人間が得意とする高度なコミュニケーションや抽象的思考が必要な仕事は困難だ。教育で言えば、どの問題で間違いが多いかはAIが分析する方が適しているが、生徒を励まして解き方を一緒に考えることは教師の役割になるという。

立法で悪用防ぎ、生活に役立てる

 AIが人間を支配するリスクについても大半の専門家が否定的だった。人工知能学会の山田誠二会長(国立情報学研究所教授)は「AIは人間が設計したプログラム通りにしか動かない」と指摘する。京都大の西田豊明教授(知能情報学)は「悪意を持った人間がAIを使って支配する可能性の方が怖い」とみる。

 それならば、暮らしに役立つ手段として、適切に活用する方策を考えるべきだ。単純労働から解放された時間を創造的な仕事に振り向ければ、人間の生活はもっと豊かになるはずだ。学校教育では知識詰め込み型ではなく、創造性を養う分野を充実させるべきだろう。AIの悪用を防ぐ法律を整備する必要もある。

 最先端の技術に追いつけない人たちも少なくないだろう。技術革新のスピードは速く、私も将来的に大丈夫かと聞かれると自信はない。

 未来社会や情報技術に詳しい一橋大の今井賢一名誉教授(産業組織論)は「助け合いの精神が必要」と提言する。「AIを研究している学生がボランティアで使い方を教えたり、知り合い同士で教え合ったりすることが大切だ」と語る。AIを使いこなす手がかりの一つになるのではないか。人間が知恵を出し合えば、恐れることはないはずだ。

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