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社説

ヘイト賠償判決 差別への厳しさ示した

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 特定の民族や人種の尊厳を傷つけるヘイトスピーチは、どんな形であっても許されない。その姿勢を明確に示す判決が先月末に出た。差別的な言動を社会からなくしていくための契機にしたい。

     在日朝鮮人の女性フリーライター(45)が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と同会の桜井誠元会長に損害賠償を求めた訴訟で大阪地裁は77万円の支払いを命じた。

     在特会は街頭やインターネットの動画サイトで女性について「朝鮮人のババア」などと発言し、ツイッターにも「鮮人記者」と書き込んでいた。判決はその一部を「在日朝鮮人に対する差別を助長、増幅させる意図があった」として違法と判断し、「公正な論評」との在特会側の主張を退けた。最近の司法の流れに沿う当然の判断だ。

     ヘイトスピーチを「人種差別」と初めて認めた京都地裁判決は2014年12月、最高裁で確定した。在特会のメンバーらが京都市の朝鮮学校周辺で繰り返した暴言に約1200万円の賠償を命じ、日本も加盟する人種差別撤廃条約が禁止する差別行為であれば損害も高額になるという考えも示した。

     今年4月には高松高裁が、朝鮮学校に資金援助した徳島県教職員組合の事務所に在特会会員らが乱入し罵声を浴びせた行為を「人種差別的思想の表れ」と認定し賠償額を1審より増やした。今回の判決も、在特会側の言動が条約の趣旨に反する侮辱行為に当たると結論付けた。

     法務省の調査によると、ヘイトデモは昨年9月までの3年半に29都道府県で1152件あった。ピーク時から減少しているとはいえ、沈静化したとは言えない状況だ。

     デモは在日コリアンの多い首都圏や京阪神に集中し、大阪市は全国の自治体に先駆けて条例を制定した。有識者の審査会がヘイトスピーチと認めれば行為者の名前を公表して抑止を図るという狙いがある。

     6月に施行されたヘイトスピーチ対策法は他国出身者への差別的言動の解消を掲げる。憲法の保障する表現の自由との兼ね合いから禁止規定や罰則はなく、実効性があるか疑問視された。しかし法施行の前日、川崎市で予定されたヘイトデモを禁止する仮処分決定を裁判所が出した。法の趣旨を踏まえ、司法が積極姿勢を見せたと言える。

     対策法は国や自治体に啓発活動や相談体制の整備を求めている。行政が対応を進め、裁判所は厳格な態度を示す。その積み重ねが差別の根絶につながるはずだ。教育の場などを通じて国民一人一人が人権感覚を高めることも必要だ。差別を許さない社会を築きたい。

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