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「生前退位」有識者会議の人選がすっきりこない

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 紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。

 以下に出てくる「幹事」は、部長会でその週の指摘を担当する紙面審査委員会のメンバーです。「司会」は編集編成局次長です。

<9月30日>

■日銀が緩和枠組み転換 夕刊の見出しは

 幹事 日銀は9月21日の金融政策決定会合で、金融政策の枠組みを変更し、市場に流すお金の「量」を重視する政策から「金利」を軸とする政策に転換することを決めた。長期金利の指標となる10年物国債利回りを当面、0%程度で推移するよう国債の買い入れ量を調整する。従来の政策目標だった年間80兆円の国債購入ペースは「めど」にとどめ、事実上廃止した。一方、短期金利を操作しているマイナス金利政策は継続し、日銀当座預金の一部に課す金利をマイナス0.1%に維持した。

 各紙が同日夕刊の1面トップで報じたが、見出しは驚くほどばらばらだった。政策転換の内容そのものが分かりづらかったためだろうか。

・毎日<長期金利に目標導入/マイナス金利 副作用配慮/日銀決定会合>

・朝日<日銀、緩和枠組み修正/長期金利をより重視/マイナス金利0.1%維持>

・読売<物価上昇2%超まで継続/期限撤廃 国債購入を柔軟化/日銀金融緩和/マイナス金利0.1%維持>

・日経<日銀緩和 量から金利へ/長期金利0%に誘導/物価 2%超まで緩和継続/総括検証>

・東京<日銀、新たに金利目標/「物価2%」まで緩和継続>

 比べると、朝日は抽象的な印象だ。読売の「物価上昇2%超まで継続」は長期金利目標に言及していない。日経はメイン見出しで「量から金利へ」と最大の特徴を押さえたうえで、他の見出しで長期金利目標の導入と緩和継続にも触れた。本数が多いせいかもしれないが、バランスがよく的確な見出しだと思った。一方、本紙のメイン見出し「長期金利に目標導入」は、今回の決定の具体的なポイントを端的に表現しているように見えた。ただ、2本目の見出しとしては、「マイナス金利 副作用配慮」よりも、「量から金利へ」「2%超まで緩和継続」などの方が優先度は高かったのではないか。

 記事も「量から金利へ」の視点が弱いように感じた。前文に「国債購入ペースは現行の年間80兆円を『めど』とし、『物価が2%を超えるまで』国債購入を続けるとした」とあるが、この書き方では、年間80兆円の国債購入が「目標」ではなくなったという大きな変化がよく伝わらない。日経は「緩和の枠組みをこれまでの量重視から金利重視へと大きくカジを切る」と書き、すっきりしていた。朝日も「緩和の目安をこれまでの『量』から『金利』に軸足を移す」と書いた。本紙は22日朝刊では、80兆円の国債購入目標について「事実上廃止した」と明記した。

 司会 出稿元の経済部。

 経済部長 今回の日銀の政策変更は、今までは「量」が基本だったが、「金利」に変えるということだ。物価が全然上がらないので、長期戦に持ち込まれてしまった。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は国債を買うのを2倍にしていくと言っていたが、このまま緩和策として「量」を増やしていくことはできなくなった。もう限界にきたという背景がある。「量から金利へ」は、経済部から見出し案として提案したが、わかりにくいということで、情報編成総センター(見出し・扱いなどの編集担当)と相談してやめた。見出しがもう1本あったら入れてもよかったかもしれない。「2%超まで」は黒田総裁が緩和と取られるのが嫌だから言っているだけで、優先度は極めて低い。ジャーナリストの池上彰さんが朝日朝刊30日の「新聞ななめ読み」で各紙の記事を比較していた。

 幹事 2%はともかくとして、「緩和継続」というのはどうなのか。

 経済部長 緩和継続は見出しにあったほうがわかりやすかったかもしれない。緩和をやめるとなると、おそらく大見出しになると思う。

 幹事 当たり前だということか。

 経済部長 夕刊の締め切り時間が迫る中で、年間80兆円の国債購入ペースを「めど」にとどめたことについては、黒田総裁の会見を聞いて判断しようと考えた。朝刊で「事実上廃止した」と明確に書いたが、夕刊で取材できたのはここまでだった。

 司会 情報編成総センター。

 編集部長 経済部長は「量から金利へ」の見出しがわかりにくいと言ったが、これが日銀の積極的な政策転換ととられたくなかったのと、「金利」とすると政策金利という誤解を招くのではと考えた。しかし、他紙の朝刊を見て、「量から金利へ」という見出しは、なるほどと思った。決め難いところはあるが、端的にという意味では本紙も悪くない見出しだったのではないか。

■「生前退位」有識者会議の人選がすっきりこない

 幹事 経団連の今井敬名誉会長(86)▽小幡(おばた)純子・上智大法科大学院教授(58)▽清家(せいけ)篤・慶応義塾長(62)▽御厨(みくりや)貴・東京大名誉教授(65)▽宮崎緑・千葉商科大教授(58)▽山内昌之・東京大名誉教授(69)−−天皇陛下の生前退位に関し、政府が9月23日に設置した「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」のメンバーだ。それぞれなぜ選ばれたのかが分からなかった。

 24日朝刊2面<生前退位 有識者会議に6氏/人選 中立に配慮/政府、来年にも法案提出>を読んでもいまひとつ分からない。会長に就任予定の今井氏は今井尚哉首相秘書官の叔父というが、それが「中立」なのか。官邸の意向に沿った提言を出すためではないのか。「皇室問題の専門家で固めず」と出てくるが、固めないどころか皇室問題の専門家は一人も入っていない。何をもって「中立」に配慮したというのだろう。「バランス」を取っているのかも判断がつかない。宮内庁サイドが今回の人事をどう受け止めているかもあったほうがよかった。

 朝日24日朝刊2面[時時刻刻]が、「いずれも政府の有識者会議や審議会などの常連メンバーだ」と書き、有識者会議のメンバーが過去に関わった主な政府の会議の表を付けていた。官邸の意向に沿った提言を出す御用有識者、御用学者を選んだのだと得心した。記事には「安倍晋三首相に近い官邸関係者は『有識者会議は、官邸のコントロールで議論を進めるための仕掛けだ』と言い切る」と出てきて説得力があったが、朝日の見方は当たっているのだろうか。読売3面[スキャナー]は「安倍カラー」がにじんだと指摘するとともに、23日付で有識者会議事務局の内閣官房皇室典範改正準備室の態勢を11人から20人に増員したことを書いていた。

 司会 最初に政治部に聞いて、宮内庁関連で社会部に聞きたい。まず政治部。

 政治部長 中立とかバランスとか、抽象的になったが、生前退位の賛否については世論調査では8割超が賛成しているので、賛成者を選んだら中立ではないのかと言ったらそうではないと思う。中立とバランスというのは生前退位の方法の話で、皇室典範を改正しなければいけないのか、特別立法なのかということに対して、具体的意見を言っていないということだ。

 幹事 何も態度を表明していない人もいる。

 政治部長 御厨さんは生前退位を認めるべきだが、皇室典範を改正しなければならないとは言っていないし、特別立法がいいとも言っていない。皇室制度に論を持っている人や、一家言持っている人ではない人をあえて選んだ。

 幹事 そういう人はたくさんいると思うがなぜこの6人なのか。

 政治部長 人選によって結論が見えるのを避けたかった。それが中立とバランスにつながることをもう少し説明すればよかった。このメンバーは御用有識者や御用学者ではないと思う。小幡さんは民主党政権時代の事業仕分けの民間仕分け人で、御厨さんも民主党時代に東日本大震災復興構想会議の議長代理をやっている。「安倍カラー」という表現はミスリードだと判断している。

 司会 社会部。

 社会部長 有識者会議のメンバーが決まった時の宮内庁の反応がほしかったという指摘だが、宮内庁はコメントする立場ではないということで、記者会見でも言及していない。そういう態度を見せていることを書いたほうがよかったかもしれない。

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