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社説

旧姓使用訴訟 実情を理解しない判決

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 女性教諭が、職場で旧姓使用が認められないことを人格権の侵害だと訴えていた裁判で、東京地裁が請求を退けた。職員の識別や特定のために職場が戸籍姓を求めることには合理性、必要性があるとの理由だ。

 旧姓使用が社会の多方面で認められ、広がっている実情への理解が欠けた判決だと言わざるを得ない。

 東京都内の私立中高一貫校に勤める女性教諭は、2013年に結婚して戸籍上は夫の姓になった。教室では旧姓を名乗り、多くの生徒からも旧姓で呼ばれているという。

 通知票や生徒指導要録でも旧姓を使えるよう女性教諭は学校に求めたが、「公人である教職員の業務には法に基づいた呼称が妥当」との理由で拒否され、提訴していた。

 判決は、旧姓を通称として使う利益は法律上保護されるとしたが、一方で、旧姓の使用が「社会に根付いているとまでは認められない」との認識を示した。

 理由として、既婚女性の7割以上が職場で戸籍姓を使用しているとする新聞社のアンケート結果や、旧姓使用が認められていない国家資格が相当数あることを挙げた。

 だが、この判断基準には首をひねる。たとえば、国家公務員の旧姓使用は01年から認められている。民間企業でも旧姓使用容認の動きは広がり、労務行政研究所が13年に上場企業など規模の大きな企業約3700社を対象に実施した調査では約65%が認めている。

 医師や弁護士も登録は戸籍名だが、仕事での旧姓使用は可能だ。

 内閣府は5月、女性活躍加速のための重点方針で「旧姓使用の拡大」を掲げた。住民票やマイナンバーカードの旧姓併記が検討されている。

 婚姻により96%の夫婦が夫の姓を選ぶ。改姓による女性の不利益を解消することが大切だとの考え方に基づき、職場での旧姓使用が拡大してきた経緯がある。

 政府が旧姓使用を促しており、現在は旧姓使用が認められていない国家資格も、今後減っていくと考えるのが自然だろう。判決のとらえ方は、あまりに後ろ向きだ。

 今回の判決は、民法の夫婦同姓規定をめぐり争われた昨年12月の最高裁大法廷判決とも整合しない。

 最高裁は「旧姓使用が社会的に広まることで、改姓することの不利益は一定程度緩和される」との理由で、夫婦同姓を合憲としたからだ。

 地裁判決は、戸籍姓の合理性と旧姓使用の利益をてんびんにかけ、前者を優位にとらえた。だが、旧姓使用が着実に浸透しつつある社会の現状に照らせば、旧姓を使いたいという個人の選択を認める弾力的な司法判断こそ求められる。

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