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余録

昨年、ドバイで行われたチェスの大会で…

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 昨年、ドバイで行われたチェスの大会で最高位のグランドマスターの称号をもつジョージアの棋士の不正が発覚した。対局中にくり返しトイレに立ち、そこに隠しておいたスマートフォンのアプリを局面分析に使用していたというのである▲先ごろ日本でも将棋のプロの公式戦でスマホの持ち込みや利用が禁止されると聞いた時、これもご時世かと思う気持ちと、将棋でこれは情けないという思いがせめぎあった。チェスはもちろん将棋でもコンピューターソフトが人間の棋力を上回りつつある今日である▲で、驚いたのはあすから始まる竜王戦七番勝負の挑戦者だった三浦弘行(みうらひろゆき)九段が年内の公式戦出場停止処分となったとの突然のニュースだった。処分理由は手続き上の不備だが、背景には将棋ソフトの不正利用疑惑をめぐる将棋連盟の聞き取り調査があったというのだ▲対局中に不自然な離席が多いというこの疑惑に、ご当人は「まったくのぬれぎぬ」と訴えている。真相は分からないが、思い出す言葉がある。その死の11カ月前、将棋ソフトとの対局に敗れた米長邦雄(よねながくにお)永世棋聖はコンピューターが棋士の力を超える日について記した▲「その日が来ても、棋士が将棋を指す姿、脳みそを振り絞って考える姿、人間の苦悶(くもん)する姿勢、対局に打ち込む集中力−−そうしたもろもろを含めてプロ棋士という存在が人々から尊敬され、愛され、ファンの心をつかみ続けることを、私はただただ望んでいます」▲もしその棋士がコンピューターの操り人形にすぎなかったのなら……そんなファンの悪夢を振り払うプロ棋士の矜(きょう)持(じ)を示すかたちで収めてほしい騒動だ。

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