メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

今週の本棚

佐藤優・評 『「他者」の倫理学』=青木孝平・著

 (社会評論社・2808円)

資本主義体制の超克に「外部」の刺激

 青木孝平氏の強靱(きょうじん)な思考力に圧倒された。素晴らしい作品だ。サブタイトルに、レヴィナス、親鸞(しんらん)、宇野弘蔵と併記されているが、三題噺(ばなし)ではない。日本の傑出したマルクス経済学者宇野弘蔵の経済哲学を掘り下げた地点から東西の思想を「他者」という切り口で分析したユニークな総合知の書だ。青木氏はレヴィナスの「絶対他者」と親鸞の「絶対他力」が共通の地平の出来事であるととらえている。<親鸞に深く取り憑(つ)いた「悪としての自己」意識は、その能動性・主体性(自力)に対する徹底的な否定に帰着せざるをえない。こうした自己(自我)に対する否定を、ひたすら自己の内部で遂行しようとすれば、それはパラドクシカルにも、不毛で際限のない自我への固執とその止め処(ど)ない肥大化に帰結していく。このことは、現象学であれ仏教であれ、これまでのほとんどすべての独我論哲学が経験したアポリアであった。ここにおいてレヴィナスと同様に親鸞が行き着いた展望は、おそらくは、自己の主体性の否定すなわち受動化を根源にまで徹底するためには、外部の「他者」の絶対的な能動性(他力)を全面的に肯定する以外にすべはないという結論だったのであろう。/これが、レヴィナスのいう存在の無限の彼方(かなた)における「絶対他者」であり、親鸞における浄土に住まう阿弥陀(あみだ)如来の「絶対…

この記事は有料記事です。

残り914文字(全文1523文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 呼吸困難や倦怠感…実は深刻なコロナ後遺症 病院で相手にされず 医師「国は対策を」

  2. 「菅語」を考える 論理的でない受け答え「首相の器ではない」 上西充子法政大教授

  3. 「感染を制御できない」 専門家に強い危機感 会合後に漏れた本音

  4. #排除する政治~学術会議問題を考える 新しい形態の学問弾圧「菅首相は歴史に名前が刻まれる」 木本忠昭・日本科学史学会会長

  5. 新型コロナに無為無策の菅政権 全額国費で「面の検査」「社会的検査」を

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです