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華恵の本と私の物語

/3 ハチミツドロップス

 わた廊下ろうかっていると、かれがやってきた。相変あいかわらずフラフラしたあるかたおおきなも、シュッととがったかおも、いつてもかっこいい。学校がっこうイチのイケメンとつきあっているなんて、わたしはラッキーだ。学校がっこうイチ成績せいせきわるいともわれているけど……。かれがわたしをとらえ、笑顔えがおになった。

    「ごめん、った?」

    全然ぜんぜん。どうしたの?」

     先輩せんぱいなのに、こうしてタメぐちはなせるのも、カノジョであるわたしの特権とっけん

    「あのさ、おれら、わかれたことにしたから」

    「……いつ?」

    「さっき、クラスのやつらにそうっておいた」

    「そっかぁ……なんで?」

    「なんか、ずかしくてさ」

     タイチくんはわたしからスッとをそらした。笑顔えがおが、すこ緊張きんちょうしている。

    「……オッケイ!」

     わたしは、すこしおどけてグーッと親指おやゆびててせた。

    「うん。ってわけで、ごめん」

    「ううん、じゃ、もどるね」

     わたしは精一杯せいいっぱい笑顔えがおでそうい、クルッとき、はしって理科室りかしつもどった。

     それから学校がっこうだれはなしたか、だれかえったのか、記憶きおくがない。

     いえかえって、自分じぶん部屋へやはいってから、ヘナヘナとすわんだ。

     ふられたってこと……だよね。あいつは、ものごとをはっきりえない性格せいかくだから、あれで、わったってことだよね。

     でも、理由りゆうが「ずかしいから」って……。それをうならわたしのほうだよ。家庭科かていかとき調理実習室ちょうりじっしゅうしつぐちにきて、「エプロン姿すがた、かわいいよ!」なんて堂々どうどうってきて。あさだって、えきわせて学校がっこうまでつないであるいて。いつも、ひとにじろじろられたのがになった。でも、かれきだから、わないようにしてたのに。

     「オッケイ」なんてって、バカみたい。ウザがられるのがこわくて、ちゃんとはなせなかった。

     わたしはきながら、携帯けいたいくら画面がめんつめつづけた。

     

     感情かんじょうをごまかして、なにつたえることができなかったり、誤解ごかいあたえてしまったり。それが中学生ちゅうがくせいのわたしだった。

    +  +  +  +  +

     『ハチミツドロップス』の主人公しゅじんこうのカズも、彼氏かれしにふられるとき、「そっか」とあっさりこたえていました。

     カズは、友達ともだちまえでも、家族かぞくまえでも、いつもおどけてみせて、本当ほんとう気持きもちをせずにいました。ところが、あることをきっかけに、自分じぶんからわろうとしはじめます。そして本音ほんねうことで、まわりのひと気持きもちもはじめます。

     正直しょうじきになるって、勇気ゆうきがいるけど、かっこいいですよね。<毎月第まいつきだい日曜日掲載にちようびけいさい


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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