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SUNDAY LIBRARY

著者インタビュー 加藤積一 『ふじようちえんのひみつ』

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ちょっと不便でめんどうな“少し昔の日本”がいい

◆『ふじようちえんのひみつ』加藤積一・著(小学館/税抜き1500円)

 まるで陸上競技のトラックのような楕円(だえん)形の園舎。子供たちが自ら育とうとする力に対し、成長段階に合わせた巧みな教材や用具を使うことで知られるモンテッソーリ教育を実践している。コンセプトづくりにはクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが参加し、さらには英語教育にも力を入れている。

 こう列挙すると少数精鋭のエリート主義のように思えるが、事実はまったく逆。東京・立川市にあるふじようちえんは、数百人の子供たちの会心の笑顔がはじける地域の幼稚園である。

「テレビをはじめメディアで紹介していただきますが、あくまで地域の幼稚園なんです。この子は良くてあの子はダメとか、どうして選んだりできるでしょう。選ぶ基準なんてないし、障害のあるお子さん、車椅子の子もいます。入園資格はただ一つ、子供であること。あとは幼稚園バスが回れる範囲にお住まいかどうか。ほんと、それだけなんです」

 加藤積一園長はそう語る。とはいえ、ふじようちえんは、加藤久美子副園長と夫婦で共同しての努力、ここに佐藤可士和・悦子夫妻、建築家の手塚貴晴・由比夫妻が加わり、夜を徹して「何が子供たちのために本当に良いのか」を語りつくしたうえでの「普通」の実践なのだ。

「幼稚園には変えてはいけないものと進化したほうがよい部分と、両方必要だと思います。例えばきちんと挨拶(あいさつ)ができる子、履物が揃(そろ)えられる子になることも大切だし、これからは英語で日本のことをしっかりと世界に伝えられる人を育てることも重要です。私たちは英語こそ子供たちへの最高のプレゼントだと考えています」(久美子さん)

 教室の上にぐるっと楕円形のスペースを設けたのはなぜなのか。壁を取り払い、いつも雑音が入ってくる構造にした理由は? どうしてすきま風をシャットアウトしないのか? その秘密がこの本にはすべて書かれている。

「幼児といえど、それぞれ人格があり、さまざまな育ち方をしています。そのうえで、文字や、人の話を聞くことなどをバランスよく身につけ、自分で感じて考えて行動する、そういうサイクルがだんだん出来上がっていく時期です。私たちは一律に何かを教えるのではなく、“どうしてなんだろう?”“そうか、だからああいうことはしちゃダメなんだ”と気づいてもらうような仕掛けをいろいろ工夫しました」

 子供が本来持っている自分で自分を育てる能力。これを重視するマリア・モンテッソーリの教育法は今日でこそ広く知られるようになったが、ふじようちえんでは先代理事長であるお父様の時代から45年間実践している。開園当時からある樹齢50年以上の3本の大きなケヤキの木と同じく、昨日今日の流行とは関係のない「伝統」なのだ。

「ちょっと不便だったり、めんどうくさかったりする日常の中にこそ、子供たちの気づきや行動をうながすヒントがあります。最先端どころか、少し昔の日本をやるのがいい。私たちはそう思っています」

 加藤園長ご夫妻が考える「なつかしい未来」への思いが、本書とふじようちえんにはあふれている。

(構成・北條一浩)

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加藤積一(かとう・せきいち)

 1957年、東京都生まれ。ふじようちえんの他、東京都認証保育所「スマイルエッグス」、託児所「スマイルキッズ」も経営。幼児教育の重要性を訴え、海外でも盛んに講演活動などを展開している

<サンデー毎日 2016年10月30日号より>

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