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くれないもゆる あきいろ奈良

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冬が終われば春が来て 春が終われば夏が来る そして秋 それはいまも変わらない

1300年前、日本の中心であった奈良 そんな奈良に もゆるあきいろ

写真・文 はしもとゆうすけ

あきいろ散歩

ここは飛火野。数年前、奈良を舞台にしたあのドラマにも度々登場した場所である。

天気のよい夕暮れ、西日をいっぱいに浴びた子鹿は、自分も奈良のあきいろの一員である事を知っているかのように、晴れやかな表情で散歩を楽しんだ。

たゆたふ

いっぱいのあきいろに包まれた山河。

ひとときも形の定まらない水の流れを、その時間とともに止めてみた。

流れは止まり、時間も止まったが、たゆたふ「ゆらぎ」のリズムは止まらなかった。

それぞれの

さまざまなあきいろの共演。

形のよい葉をもつ大木が華麗なその姿を誇示すれば、ある人は立ち止まり、またある人はシャッターを押す。

足早に通りすぎようとする人たち、もう少しゆっくり歩いてみてはどうか。

まだ冬は追いついてこない。

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スパッタリング

見上げればさまざまな色。この写真を見ていると、いわゆるスパッタリング法という絵画における技法を思い出した。

歯ブラシなどにつけた絵の具を、金網にこすって描く技法のことだ。

秋晴れの一日、さまざまなあきいろの葉を透過してふりそそぐ太陽光。

絵の具よりも鮮やかだった。

k i m o n o

季節も進み、どこへ行けばいいのかわからなくなるほど、各地で色づき始めた。

ここ数年、落葉する前に葉が傷んでしまうことも多いが、運良く状態のよい時に撮影することができた。

撮影の時はいつも撮りたいイメージをもって現地へ行く。

イメージ通りにいけばいいものが撮れるし、そうでないことももちろんよくある。

今回のイメージは「着物」。仕立ての良い老舗の反物のつもりで撮ってみたが、どうであろうか。

長谷寺

広い境内を四季の花が彩る奈良・長谷寺。

花のイメージがあるが、伽藍(がらん)を含むその全体が美しい山に溶け込み、いつ行っても心満たされる魅力ある寺だ。

つり灯籠(とうろう)が風情ある登廊。断崖絶壁にせり出した本堂の舞台。礼堂の床は鏡のように美しく風景を映し込む。

そしてまばゆいばかりに輝く本尊十一面観世音菩薩(ぼさつ)立像は10㍍もある大きさ。実は春と秋に特別拝観で本堂の中に入ることができ、ご本尊の御足に直接手を触れることができる。

私も感動のあまり、2度目は両親を連れて行ったほどだ。

談山神社

観光パンフレットのような写真で恐縮だが、談山神社の秋をわかりやすく表現しているのがこの写真だった。

かなり派手な色目になっているが、誇張でもなく、実際の色にかなり近い。

それほど談山神社の秋は美しい。

11月12日からは紅葉のライトアップも始まるので、とても楽しみにしている。

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もみじの階段

歩くのをためらってしまうほど、もみじでいっぱいになった階段。まだきれいな葉っぱが多いのでなんとなく気になるのだ。

そうはいっても行かなければ次へは進めない。

できるだけ体重をかけずにゆっくり登っていくと、上から犬が駆け下りてきて、そしてまた登っていった。

葉っぱを踏む時の音や感触を楽しんでいるのだろう。

気持ちはわかる。

 

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猫段

東大寺大仏殿のすぐ東側、心地よい日陰を作ってくれる大きなもみじの木。

新緑のころも気持ちいいのだが、紅葉すると雰囲気がガラッと変わる大好きな場所だ。

猫段……という名前は、ここで転ぶと猫になるといういわれがあるからなのだが。

やはり転んでみる勇気はない。

いちばんきれいだった日

ある年の晩秋。夕暮れ時、奈良があきいろに染まった。

二月堂の職員さんも数年に一度あるかないか、と言うほどの空だった。

オレンジからピンクまでのグラデーション。

大仏殿も二月堂も、参拝者も恋人たちも、運の良いカメラマンも、ここにいたすべてのものが同じ色になった。

あれ以来、これほどの空には出会えていない。

だから秋の夕暮れにはついついここに来てしまうのだ。

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はしもとゆうすけ

サラリーマン写真家。1970(昭和45)年11月生まれの45歳。「奈良はよいとこ」 http://www.nara-wa-yoitoko.com/ で作品を公開中。鹿写真が好評。可愛いだけではなく、その「いのち」を撮ることに奮闘中。

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