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<記者の目>新潟県知事選 原発慎重派の圧勝=米江貴史(新潟支局)

個人演説会で、支援を受ける市民団体のメンバーに囲まれる米山隆一氏=新潟県上越市で10日、柳沢亮撮影

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反・再稼働、見極め必要

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が争点となった新潟県知事選は、慎重姿勢を示す米山隆一氏(49)が初当選した。共産、自由、社民の野党3党の推薦を受けた候補が、大方の予想を覆して自民、公明の与党が推す候補に約6万票の大差をつけた。元々は原発推進派だった米山氏。新知事としてどんな手腕を発揮するのか、見極める必要がある。

 「オール新潟の勝利。これからがスタートとなる」。当選を確実にした16日夜、米山氏は声を張り上げた。保守層や無党派層の票も取り込む完勝。「オール新潟」の言葉には、原発への不安を抱える県民から満遍なく支持されたとの思いがにじんでいた。

 そもそも知事選は、2月に出馬表明した泉田裕彦知事(54)と、反泉田派県議や市町村長らが8月に擁立した前全国市長会長の森民夫・前長岡市長(67)による争いとみられていた。

 それが8月末、事態が一変する。東電に厳しい姿勢をみせる泉田知事が突如、出馬を撤回したのだ。共産党を除く主要政党の推薦で3選を果たした泉田知事の4選が有力視されていたさなかの出来事。森陣営は自民、公明両党の推薦や連合新潟の支持を取り付け、楽勝ムードすら漂った。

出馬表明会見で推進派から転向

 告示6日前、野党側が「奇策」に打って出た。自主投票を決めた民進党の次期衆院選候補予定者の米山氏を引き抜いたのだ。米山氏は自民、維新両党から国政選挙に過去4回出馬したが、いずれも落選。これまでブログなどを通じて「原発推進派」を自認していた。それが出馬表明の記者会見では「考え方が間違っていた。現在の科学技術では(原発事故は)収束できない」と慎重派への「転向」を表明した。

 選挙戦の中盤で、民意が大きく動いたと感じる場面があった。「電話をかけると『よくぞ反原発の候補を立ててくれた』って激励の声が予想以上に多くて驚いているよ」。米山陣営の関係者が手応えを口にした時だ。時に国と戦ってきた泉田知事という「つっかい棒」が外れることへの県民の不安が着実に票に結びついていった。

 ただ森氏も手をこまねいていたわけではない。「(再稼働の前提となる)原子力規制委員会の審査後に独自検証し、問題があればノーと言う」と主張。米山氏の猛追を受け、街頭演説で原発政策に時間を割くようにもなった。

 投票率は53・05%。前回を10ポイント近く上回ったが、7月の参院選新潟選挙区(59・77%)には届かなかった。風が吹いたわけでもないのに、国政で4回負けた候補者が盤石に見えた与党候補になぜ勝てたのか。自民党の県連幹部が「再稼働反対のワンフレーズに負けた」と述べたように、最大の勝因は「脱原発」を押し出した点だ。共同通信の知事選出口調査で再稼働に反対する有権者は64%、うち約70%が米山氏に投票したという数字が県民の意識を物語る。

 実際、原発立地県として、福島第1原発事故は人ごとで済まされない。県内には約3300人の自主避難者もいる。福島県郡山市から新潟市に自主避難中の磯貝潤子さん(42)は、避難生活について米山氏と話したことがあるといい、「分かってくれていると感じた」と話す。

対話路線を模索「後退」の印象も

 初当選から一夜明けた17日、泉田知事の路線継承を掲げる米山氏は、再稼働について報道陣に問われ、福島第1原発事故の検証が終わっていないことなどを挙げ、「現状では議論は始められない」と述べた。ただ、選挙戦で対立した政府・自民党や東電とは対決でなく対話と議論を進める考えも示し、再稼働に必要な態勢が整った場合は「(選択肢として)閉ざす必要はない」と含みを持たせた。

 「脱原発」候補として、鹿児島県知事選で初当選した三反園訓知事との違いはあるのか。現職知事に反発する保守系県議の応援も受けた三反園知事は、九州電力川内原発の即時停止を2度にわたって求めたが、支援者には原発推進派もいて顔色をうかがう姿勢が見え隠れする。

 一方、米山氏を支援した野党3党は反原発で足並みをそろえる。新知事として思い切った対応ができるはずだが、対話路線を模索する姿勢は一歩後退との印象も与えている。県議会最大会派で古巣の自民党を意識したわけでもないだろうが、原発再稼働について「現状ではない」とする米山氏。11月にも開く臨時県議会で、原発を巡る立場の変遷などが取り上げられるのは間違いない。最初の試練を迎え、どのように答弁するのか。全国から注目されてきた泉田知事の鮮明な姿勢との違いはあるのか。言葉だけでなく、表情やしぐさを含め、注視していきたい。

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