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ニッポン瞬・彩

粋な夜流し おわら風の盆(富山市八尾町)

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 山裾に広がる、石垣に囲まれた坂の街、越中八尾(富山市八尾町)。古い家並みが並ぶ静かな街は、1年にたった3晩、ヒリヒリと熱を帯びた濃密な空気に満たされる。三味線と胡弓(こきゅう)、哀調の調べにあわせ、編みがさ姿の若い男女が街を踊る「おわら風の盆」。男女息を合わせた夫婦踊りには、観客のすすり泣く声さえ聞こえる。おわらの里に生まれ、踊りに明け暮れたカメラマン、赤羽仁諭さん(61)が切り取る「おわら」は、自らの半生の証し。あいにくの雨ながら23万人が訪れた2013年9月の「おわら風の盆」を、赤羽さんの写真とキャプションで紹介する。

写真・キャプション 赤羽仁諭

毎年5月の曳山(ひきやま)祭りが終わると、八尾町民はすぐに、おわら風の盆の準備に入る。ぼんぼりを張り替え、女子は踊りに備えて手先や襟元が日焼けしないように気遣う。そして、日本舞踊の極みともいわれる、指先まで張り詰めた所作を磨く。また9月1日から、濃密な三日三晩に身も心も浸すのだ

八尾町には11の町内でおわら保存会支部があり、衣装や踊り、伴奏、歌い方に町ごとの特徴を受け継ぐ。先輩から後輩へ、手先から足元まで厳しく指導される。本番まで残り数日、編みがさをかぶると左右の人は見えない。自分は間違えていないだろうか……。不安の中、夜更けまで練習は続く

東新町支部は、戸数の一番少ない町。養蚕の蚕を奉った若宮八幡宮(蚕宮)があり、その広場が前夜祭会場になる。この町の少女だけは早乙女(田植え姿)の衣装を着る。赤いたすき掛けが可愛らしい

「唄(うた)の街だよ八尾の街は 唄で糸取る オワラ 桑も摘む」中山輝

下新町支部。長く続くぼんぼりに縁取られた坂道を、子供を中央に青年男女で包み込み、観光客をかき分けながら町を流す。2階の部屋から格子戸を開け、ビール片手に見られるのは住民だけの特権だ

「来られた来られた ようこそ来られた 来られたけれども わがままならない」

東町支部のおわら資料館前の町流し。私財をなげうって越中おわらを育てた初代おわら保存会長、川崎順二の生家跡で、越中おわら発祥の地の碑がある。お金持ちが多かったのか、この町の衣装だけは他町と違い帯も金銀の市松模様。昼間に見ると金銀が輝きとても華やかだ

鏡町支部は、かつては遊郭でにぎわった花街。生まれ育った場所をひいきにするわけでもないが、花街の心意気が引き継がれている鏡町の踊り演出は最高だ。妖艶に踊るその編みがさの隙間(すきま)からチラリと見える瞳にはゾクッとする

「おたや地蔵さんこの坂下は 今宵(こよい)なつかし オワラ 月あかり」野口雨情

2013年は近年にない雨だった。初日と2日目は思うように町流しができず気をもんでいたが、最終日は何とか雨も上がり、「名残のおわら」に。引退する上新町の踊り子2人も、地方衆(じかたしゅう)と心ゆくまで踊りを堪能していた

「浮いたか瓢箪(ひょうたん) 軽そに流れる 行くさきゃ知らねど あの身になりたや」

団体観光バスの発着場に降りたって対岸を望むと、井田川沿いの高台には石垣が続きその上に家々が建ち並ぶ。風の盆のこの期間、ぼんぼりに包まれた石垣は幻想的で、より一層美しく輝く

「富山あたりかあの燈火(ともしび)は 飛んでゆきたや オワラ 灯(ひ)とり虫」八尾四季 小杉放庵

撮影者の横顔

 赤羽仁諭(あかばね・じんゆ)さんは1955(昭和30)年10月、八尾生まれの61歳。印刷会社カメラマンを経て89年独立。99年から観光ポスターの写真を手がける。おわらを知り尽くした赤羽さんだが、10年撮り続けてやっと納得の1枚、ということも。踊り明かして人影もまばらになった9月4日の夜明け、「また来年ね」との思いを込めた「名残のおわら」に、まつりの神髄を感じるという。

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