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エンタメ小説・今月の推し!

次々と世に出るエンターテインメント小説。例えばミステリー一つとってもさまざまなタイプの快作、意欲作があふれている。一緒にその大海を航海しましょう。

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構成の巧みさ 裏アカの世界

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 貫井徳郎『壁の男』(文芸春秋)は考え抜かれた構成で、一人の男の生きてきた道をさらりとつづりながら、生の重さを感じさせる。

 家々の壁が拙い絵で覆われた栃木県のある町が、ネット上で話題になっていた。ノンフィクションライター鈴木は絵を描いた伊苅を取材しようとするが、対応はつれない。何気なく物語の幕は開く。鈴木の取材によって、なぜ絵を描くのか、町の人々はどう受け入れたのかが明らかになるというこちらの期待は裏切られる。伊苅は東京からUターンしたらしい、会社員だったようだ、娘を亡くしているそうだ。作家の筆は抑制気味で多くを語らず、あちこちに違和感を抱えながら読み進む。やがて隠していたカードの中身が徐々に明かされていき、絵を描い…

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