特集

今週の本棚

「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

特集一覧

今週の本棚

渡辺保・評 『昭和の歌舞伎名優列伝』=石橋健一郎・著

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷

 (淡交新書・1296円)

微妙に交錯する舞台の芸と実人生

 六代目梅幸(ばいこう)は、昭和九年十一月歌舞伎座の舞台で倒れるまで活躍していた歌舞伎の名女形である。江戸前の鉄火で、粋な女性の役を得意にした。たとえば「源氏店(げんじだな)」のお富、「お祭り佐七」の芸者小糸、「十六夜(いざよい)清心」の花魁(おいらん)十六夜、「直侍(なおざむらい)」の三千歳(みちとせ)。いずれも江戸の市井で恋一筋に生きた女たちである。 

 梅幸は、日常は女形らしく穏やかな「紳士」であり、「苦労人」だった。しかし、と著者はいう。その反面大酒豪であり、酔うと酒乱の気があった。それは梅幸に「深い心の闇」があり、その闇と闘い続けていたからだろうと。

この記事は有料記事です。

残り1187文字(全文1497文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集