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湯川豊・評 『浮遊霊ブラジル』=津村記久子・著

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 (文藝春秋・1404円)

おもしろい語り口に新しい可能性

 この短篇集の最初に置かれた「給水塔と亀」は、めったに出会えぬ秀作である。二○一三年の川端康成文学賞を受賞した。

 一度も結婚しないで定年を迎えた「私」は、故郷のアパート代がいま住む場所の半分であるのを知って、故郷に帰ることにした。きょうは二階建てのその安いアパートに入る日で、「私」は通った小学校(改築されている)や国道沿いの新しいスーパーや本屋を注意深く見まわった後、アパートの自室にやってくる。その部屋の前の借り手は独身の高齢女性の乃代(のよ)さんで、部屋で孤独死した。

 管理人のおばさんは、暗い顔して、ふ、と笑う人。あけすけにいう。「乃代さんといいあんたといい、どうして一人でいられるの?」。これには「忙しくて不器用だったんです」ととりあえず答えるしかない。

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