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武田 砂鉄・評『たとえる技術』せきしろ・著

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“のように”が持つ無限の可能性に気づく

◆『たとえる技術』せきしろ・著(文響社/税抜き1380円)

 豪雨の日に街へ出たリポーターが必死にマイクを握りながら「バケツをひっくり返したような雨が」と言う。あぁ確かに、と思う。でも、そんな自分はバケツをひっくり返したことがあっただろうか。少なくともこの四半世紀はひっくり返したことがない。でも、そのたとえにすぐさま納得する。ひっくり返した光景を頭に浮かべ、テレビに映る豪雨と重ね合わせ、「これは相当ヤバイ」と実感する。

 作家・せきしろが「『たとえる』と一瞬にして目の前の世界が変わる」と、あらゆる視点や状態や感情をたとえていくこの本。「違う」と書くだけでは伝わらない違いを「若貴兄弟それぞれの人生のように違う」と書けば伝わる。転がり方にもいろいろとあるけれど「電車の座席と座席の間を行ったり来たりする空き缶のように転がる」とあれば、転がり方を共有できる。

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