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SUNDAY LIBRARY

著者インタビュー 鈴木伸子 『シブいビル』

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“見せ場”を作ったビルのいぶし銀の魅力にぐっとせまる

◆『シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』鈴木伸子・著(リトルモア/税抜き1700円)

 2度目のオリンピックが2020年開催と決まり、東京の中心街は今また、さまざまな再開発で揺れている。そんな中、前回のオリンピック前後に建てられ、50年ほどの歳月を生きてきた東京のビルを「シブさ」に着目してガイドしたのが本書である。

「戦前の建築は文化財になったり研究の対象になったりしていますが、1960年代、70年代に生まれたビルは、ほとんど紹介も批評もなされていないんです。そこでこの本では、名前はよく知られているけど建築物として紹介されることが少ないビルを狙っていこうと考えました。名建築集ではなく、気になるビルを集めた本。あまり語られないけど、これらのビルもそろそろ年代モノだよ、ということをわかってほしいと思います」

 鈴木伸子さんはそう語る。写真家の白川青史さんとコンビを組み、東京の20のビルにあらためて着目し、歴史や意匠、ディテールなどを語っていく。

「取材ではまず、建物の中で、できた当初と変わっていないのはどこかをお聞きします。改装しにくいせいか、階段は当時のままという例が多く、あと床ですね。テラゾーといって職人さんがセメントやモルタルの中に石を混ぜて模様にした床は、60年代建築の特徴の一つです。壁がそのまま時計になっているもの、随所にモザイクタイルを多用しているのもよく見られます」

 時は高度成長期。いっぽうで装飾性に満ちた遊び心があり、同時に現代のビルに比べると鉄筋やコンクリートをたっぷり使用したずんぐりしたフォルムにも見える。それが50年の時を経て「シブ」く写るのだ。

「見せ場が作ってあるかどうか、あとメンテナンスの良さも大事なポイント。ビルというと四角四面の印象がありますが、窓の角のところがまるくなっていたり、バルコニーが湾曲していたりするのもこの時代の建物によく見られるデザインです」

 ビルに見せ場があるのは、当時は最先端の建物であり、高度成長期ならではのハレの舞台として意識されていたからだろう。

「今でこそ銀座なんかもご近所を歩くのとそう変わらない格好で平気で行ったりしますが、私が子供の頃は革靴を履いて、めいっぱいおしゃれしておでかけする場所でした。ホテルニューオータニでピアノの発表会があった時は興奮したし、発表会の後にあの独特の回転ラウンジに連れて行ってもらった時はワクワクしましたね」

 昭和の明るさ、勢いの象徴ともいえるこれらのビルは、いつまで持ちこたえられるのだろうか。

「次々に新しい建物が現れるところも東京の良さだと思いますから、全部残してほしいなんて言いません。でも、ル・コルビュジエがらみで国立西洋美術館が世界遺産の仲間入りをしたように、その時代に生きている人が歴史を作っていくわけですから、少しでもみんなの意識がそうしたシブいビルに注がれるようになれば、保存や研究の対象になっていくでしょう。あの時代の輝きは今でも目を凝らせばビルの中に見える。でも、しっかり凝らさないと見えないよと私は言いたいですね(笑)」

(構成・北條一浩)

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鈴木伸子(すずき・のぶこ)

 1964年、東京都生まれ。『東京人』副編集長を経て、都市や建築、鉄道などをテーマに執筆や編集活動を行っている。著書に『グッとくる鉄道 見て乗って感じる、胸騒ぎポイントガイド』『わたしの東京風景』など

<サンデー毎日 2016年11月20日号より>

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