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<記者の目>警察の不祥事隠し=袴田貴行(北海道報道部)

警察の懲戒処分で未発表とされた事案が書かれた開示文書=武市公孝撮影

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自らの恥部、公表を

 どんな組織にも「不祥事」は付き物だ。とりわけ全国で30万人近い職員を抱える警察のような巨大組織ともなれば、根絶するのは難しいだろう。だが、起きてしまった不祥事は積極的に公表する方が抑止効果も生み、国民の信頼をつなぎ留めることにつながるはずだ。警察上層部はそのことに気付いてほしい。

     私は同僚記者と警察庁や全国の都道府県警察に、2015年に出された職員の懲戒処分に関する公文書を情報公開請求し、開示された文書を基に各地の警察を取材して懲戒処分の公表状況を調べた。

     その結果、同年に全国の警察官ら警察職員293人に出された懲戒処分のうち、151人の処分は警察側が報道発表していなかったことが判明。さらに処分内容を精査したところ、未発表のうち99人分の処分事案には法令違反の疑いがあることも分かった。

    同じような実態、全国でも相次ぐ

     調査のきっかけは、担当している北海道警の不祥事の取材だった。道警がすべての懲戒処分を発表しているわけではないと知り、15年に出された懲戒処分に関する文書を開示請求したところ、強制わいせつや住居侵入、ひき逃げなど法令違反が疑われる複数の処分事案を発表していないことが判明。道警は警察庁の「懲戒処分の発表の指針」を基に発表の当否を判断していたことから、同じような実態が他の警察にもあるのではと考え全国調査した。結果はおおむね予想通りだった。

     警察の懲戒処分は、免職▽停職▽減給▽戒告の4種類。警察庁の指針では、このうち発表するのは(1)職務に関する行為(2)私的行為のうち停職以上の行為(3)内外に及ぼす影響などを勘案し、国民の信頼を確保するため、発表が適当と認められる懲戒処分--としている。この規定は裏を返せば「法令違反の有無に関わらず、職務と関連しない減給以下の処分は発表しなくてもよい」と解釈することもできる。

     実際、指針を基に各地の警察が判断した結果、同年は▽女性の上半身に触れ、とがめた女性を突き飛ばし、駆け付けた駅員に暴行を加えて逮捕された(東京都警察情報通信部・技官)▽同僚のクレジットカードやキャッシュカードを窃取し、新幹線の回数券を購入した(埼玉県警・巡査)▽量販店などで食料品や発泡酒を窃取した(福岡県警・巡査)--などの減給処分が報道発表されていなかった。各警察は逮捕や書類送検の有無など詳細は明らかにしていないが、もしこうした行為で一般市民が警察に逮捕されれば、報道発表されて容疑者として氏名、住所、職業が明かされる可能性が高いケースも含まれていた。

     この現状について、組織の不祥事対応に詳しい同志社大の太田肇教授(組織論)は「警察には高い倫理規範が求められているので、不祥事を公にし過ぎると『社会に示しがつかなくなる』という思惑があるのかもしれない。しかし、閉鎖的な姿勢のままだとかえって不信感をあおることになる」と指摘。その上で「国民の信頼を確保するためには、不祥事を積極的に公表する方が警察にとってプラスになり、組織の引き締めにもなる」と話している。

     昨年は大阪府警と埼玉県警の現職警察官が殺人の疑いで逮捕され、今年8月には大分県警別府署員4人が参院選の公示前に野党支援団体の施設敷地内に無断で隠しカメラを仕掛けたとして建造物侵入容疑で書類送検されるなど、国民の警察に対する信頼が揺らぐ事態が相次いでいる。こういう時だからこそ、太田教授の言う「不祥事を積極的に公表することで国民の信頼をつなぎ留める」姿勢が求められていると思う。

    厳格な基準設け、信頼に応えよ

     この夏、胸を打つ光景を目にした。夜間に公共施設や文化施設を開放する「カルチャーナイト」と呼ばれるイベントが札幌市であり、道警本部にも多くの市民が訪れた。パトカーと白バイの体験乗車コーナーには子供たちが長蛇の列を作り、間近に警察官を見て目を輝かせている。道警音楽隊によるミニコンサートでは、お年寄りたちが穏やかな表情で聴き入り、笑顔で拍手を送っていた。地域の治安を守り、社会正義の実現を担う警察官たちに、人々は厚い信頼を寄せている--。そう実感させてくれた。

     警察庁は「懲戒処分の発表の指針」を見直し、より厳格な公表基準を設けるべきだ。「不祥事を公にし過ぎると国民の信頼を失ってしまう」といった懸念があるのかもしれないが、そうしたことを恐れず、自らの恥部を積極的に明かそうとする姿勢にこそ、国民は好感を持ち支持を送るはずだ。そして、警察に厚い信頼を寄せる人々の期待に応える結果にもつながるだろう。

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