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海部宣男・評 『ヒトラーと物理学者たち』=フィリップ・ボール著

 (岩波書店・3996円)

政治・倫理的責任を遠ざけてしまう弱さ

 誰しも、戦争のための研究はしたくない。だがいま日本では、防衛省の研究公募に科学者としてどう対応するかが問題になっている。研究費が年々縮み海外の会議出席も困難になった研究者には、潤沢な資金をちらつかせる防衛研究は魅力的に映る。

 しかし先の戦争で、科学者は総動員法の下、兵器開発や生体実験にまで手を染めた。「学者の国会」たる日本学術会議はその反省を踏まえ、「科学者としての節操を守るためにも、戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わない」と宣言した(一九五〇年)。その日本学術会議が新たな「軍事研究」の誘惑にどう対処するかが、注目される。

 このタイミングで刊行された本書は、戦争と科学、科学者の倫理に大きなスケールで問題を投げかけている。…

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