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SUNDAY LIBRARY

小林 聡美・評『70歳の日記』『人生という作文』

◆『70歳の日記』メイ・サートン/著(みすず書房/税抜き3400円)

◆『人生という作文』下重暁子・著(PHP新書/税抜き780円)

 「日記買う」は俳句における冬の季語だ。10月も半ばを過ぎれば文具屋や書店の棚に来年のカレンダーやスケジュール帳、日記帳が並ぶ。

 日記を書かなくなって幾年月だろう。昔々の大昔、小学校の絵日記から始まって、高校生くらいまでは、日記というものを結構マメに記していた。しかしそれらは今、手元に一冊もない。高校卒業の頃に、友達と江戸川の河川敷で焼き芋をしたとき、みな火にくべられた。「日記を火にくべる」というのはなんだか情念の響きがあるが、そんな重い意味はない。ただ、それらの日記を読み返してみると、ネガティブでおセンチで、これが自分なのか、というくらいに恥ずかしい内容で、「これを手元に残す意味はあるのか。誰かに読まれたら死ぬほど恥ずかしい」と、一旦焼却することにしたのだった。そう、その焼き芋大会は、友達同士でそういったものを焼こう!という会でもあったのだ。いかにも浅はかな青春の一ページ。一旦もなにも焼却したものは復元しないわけで、私の青春の日々の想いはさつま芋を焼く炎の煙となって昇天したのだった。

 『枕草子』や『蜻蛉日記』然(しか)り、世には日記文学という、人に読まれることを意識して書かれた日記がある。メイ・サートンの『70歳の日記』(幾島幸子訳)もそのひとつだ。サートンはベルギー生まれ。4歳の時戦火をのがれ家族でアメリカに亡命し、のちに作家、詩人、エッセイストとなり、58歳の時に書いた『独り居の日記』から『82歳の日記』まで計8冊の日記作品を発表している。人に読まれることを意識した日記は…

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