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私の社会保障論 精神保健を変えた「対話」=東京大医学教育国際研究センター講師・孫大輔

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 「むかしMattoの町があった」というイタリアの映画がある。1960年代から20年にわたり、精神科病院の解放運動をした医師フランコ・バザーリアの物語である。当時、精神を病む患者は小さなおりに閉じ込められたり、独房のベッドに縛り付けられたりしていた。院長として赴任したバザーリアはその病院を大改革する。拘束されていた患者を自由にし、患者を罰するような行為を禁止させ、患者も職員も皆が輪になって話し合う「対話」を始めたのである。

 最初はあまり話をしなかった患者たちも、回を重ねるうちに積極的に発言するようになり、自分たちの置かれている状況に対して声をあげるようになる。「自分は頭がおかしいわけじゃない」と。この映画は実話に基づいたもので、実際にイタリアでは78年に精神保健法(バザーリア法)が成立し、精神科病院は廃絶された。現在、イタリアでは患者は入院せず、予防や治療は地域精神保健サービス機関が提供している。

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