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第42回健康セミナー 「腸内フローラ」の腸!いい話 伊藤裕・慶応大医学部教授/上 多様性が最重要

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 <毎日新聞社の催し>

 第42回健康セミナー(三越厚生事業団主催、毎日新聞社など後援)が11月24日、東京都内で開かれました。「『腸内フローラ』の腸!いい話」と題する伊藤裕・慶応大学医学部教授(腎臓内分泌代謝内科)の講演を2回にわたって掲載します。

 私たちの体にとって内側と外側は非常に大きな概念です。食べたものは食道、胃を通って腸に入り、便になって外に出ていく。ですから、腸は「外」と通じている。体の外にあるんですね。脳や心臓、血管は体の中の世界。がんは、内と外とが接しているところにできるわけで、肺や胃、大腸などその境になっている臓器が非常に危ないんです。

 さて、腸内細菌についてです。彼らは体の内と外との境にすんでいます。腸の表面は厚さ0・5ミリの薄い粘液の膜に覆われていて、この中に1000種類以上、100兆個以上の細菌がいる。重さは1キロから1・5キロ。便の半分は腸内細菌とその死骸なので、便の色やにおい、形を見ることで、ある程度腸内細菌の健康度を知ることができるんです。

 では、我々は腸内細菌をいつ持ったのでしょうか。お母さんの中にいる時は全く菌がなく、生まれてくるところでお母さんから感染したんです。ですから、我々の腸内細菌はお母さんの腸内細菌と非常に似ている。その後、母乳などを通じても感染するので、生まれてすぐ、そしてしばらくの間のお母さんとの接触が非常に大きいと言われています。そこで感染したものを一生持ち続けるわけです。

善悪より全体数

 腸内細菌には、いい菌、悪い菌があるという話がありますね。善玉菌が多い方が健康で、悪玉菌が多くなると健康に悪いと。でも、腸内細菌全体から見ると、善玉菌や悪玉菌は少なく、ほとんどはギャラリー、日和見菌です。体の状態によって善玉菌と一緒になっていいことをするし、悪玉菌と協調して悪いことをする。ですから最近は、いいとか悪いとかの区別ではなくて、腸内細菌の多様性が一番大事じゃないかと言われています。

 当然、人によって腸内細菌が多い方、少ない方がいます。そこで調べてみると、(釣り鐘形の)正規分布ではなくて、細菌が少ないグループと、多いグループに分かれることが分かってきたんですね。しかも、同じものを食べても、腸内細菌の数が少ない方が太りやすかった。善玉菌が多いとか少ないとかが問題ではなく、(腸内細菌全体の)数が少ないだけで太りやすく、病気になりやすいことが分かってきたんです。

 米国のワシントン大学にジェフリー・ゴードンという先生がいます。世界各地から、一方が太っていて、もう一方が痩せている一卵性の双生児を見つけてきて、それぞれから便をもらいました。そして便を無菌マウスに移植すると、面白いことに、同じだけ食べても、太っている方から腸内細菌をもらったマウスの方がより太りました。腸内細菌が太りやすいかどうかを決めているということですね。「便移植」ということがテレビや雑誌で取り上げられていますが、いい腸内細菌をもらうと、我々の体質が変わるかもしれないということです。

食事で細菌が変化

 もう一つ、短鎖脂肪酸についてお話しします。腸内細菌は我々が食べたものを消化してエネルギーを得ていますが、その代謝物が短鎖脂肪酸です。それが体の中に吸収され、血液の中を巡って心筋や脂肪、いろんな臓器に作用を及ぼしていく。神経や脳にも働きます。ですから、うつ病とか、アルツハイマー病とかパーキンソン病なども実は腸内細菌が関係しているということが分かってきました。

 では、我々はどうしたらいいのでしょうか。食事内容を変えることで、腸内細菌の種類が変わったという実験があります。腸内細菌が多いグループと少ないグループに分け、それぞれ制限食(男性は1日1500キロカロリー、女性は1200キロカロリー)を6週間取っていただきました。その後、腸内細菌を調べると、6週間カロリーを制限するだけで、腸内細菌が少ない人たちの細菌が増え、普通食に戻しても、1カ月半ぐらいそのままの状態が続いたんです。いい食事内容にすることによって、腸内環境を変えることができるかもしれないということですね。(※食事内容については〓をお読みください)

 いつ食べるかも問題です。腸内細菌には昼に増える菌と夜増える菌がいます。動物実験で、同じだけカロリーを取っても、毎日規則正しくエサを与えられたネズミは太らず、だらだら食べさせると太りました。同じ研究グループがその後結果を発表して、だらだら食べさせられていると腸内細菌のバラエティーが減ってしまうことが分かりました。どうして規則正しく食べなければいけないかというと、我々のおなかの中の腸内細菌が元気でいるために必要だというふうに考えられます。(以下、9日に掲載)


主催 公益財団法人

   三越厚生事業団

後援 日本循環器学会

   日本動脈硬化学会

   日本人間ドック学会

   日本老年医学会

   日本心臓財団

   毎日新聞社


 t.jigyou@mainichi.co.jp

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